短編 | ナノ それだけを言うとクロームちゃんは走って行ってしまった。
一人残された私は、どうして話しかけて、どうして断れて、どうしてと疑問ばかりだ。ため息が出る。

「…わけがわからないよ」

ふと足元に視線を落とすと、河川敷を歩いていたようで緑が見えた。
ああ、幸せを呼ぶクローバーとかあったな。なんて小学生の頃に必死で探したものをなんとなく探す。

「…これ」

本当に見つかるとは思ってない。けど、もし見つかったらクロームちゃんにあげようかな、なんて考えるのはさっき見せた彼女の表情が原因だろう。
どうすればいいのかわからずに困っていた、でもどことなく嬉しそうなクロームちゃんを見て、可愛いと思った。恋愛感情ではなく。

「…あ」

そう簡単に見つかるわけない。そう思っていたのに、見つけてしまったよつばのクローバー。
泥だらけの手を叩いて、私は走って家に帰った。



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