短編 | ナノ 「抱きしめていいかい?」
彼の瞳が真剣で、私はどうすればいいのかわからない。
黙ったままでいる私に彼は怒るでもなく落ち着くようにと、頭をずっと撫でてくれている。
「さっきの質問」
「……え」
「抱きしめさせてくれたら答えてあげる」
ヒバリさんの顔を見ると少し恥ずかしそう、でも真剣だった。
知りたい。それに、好きな人に抱きしめられたくない訳ない。目を閉じて頷く。
それが今の私の精一杯だ。
すると、待ってましたと言わんばかりに強く抱きしめられた。
耳元で彼の吐息が聞こえる。
「なまえ、」
「ヒバリ、さん」
なんだかドキドキとする。
きっと、この心臓の音は彼に聞こえてしまっているのかもしれない。そう思うと余計にドキドキとする。
「好きだよ」
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