短編 | ナノ 「早く入りなよ」

いつまでもドアの前にいる私の手を引いた彼は、心なしか楽しそうだった。
頭が付いていかない。なんで、彼がここに?ヒバリさんってまさか、彼なの?

「……あ、の」

ソファーに座らせられて混乱中の私にお茶を出してくれた。
噂に聞くヒバリさんと違いすぎてどうすればいいかわからずにいると、隣に彼が座った。

「…あ、の」

泣きそうだ。というかほぼ泣いている。
そんな私を優しく見つめているヒバリさんは、急に頭を撫でてきた。

「どうしたの」
「ど、して、わたし」

彼の手があまりにも優しくて泣いてしまう。
訳がわからなすぎる。なんで、私に優しくしてくれるのか、なんで撫でているのか、どうして私を助けてくれたのか、考えたらキリがない。

「ねぇ、なまえ」

涙を拭いて、隣のヒバリさんを見る。




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