短編 | ナノ 彼は傷一つ付いてないということに血を拭ってから気付いた。

「ねぇ」

イライラしているのか、彼の声は低い。

「怪我、」
「する訳ないでしょ、早く離しなよ」

言われてから、彼の腕をずっと握っていたことに気付く。
慌てて離してからホッと息をついた。

「良かった」
「今度こそ咬み」
「怪我、してなくて良かった」

そう笑った私に、彼は固まってしまった。
時計を見るともう下校時間はとっくに過ぎていて、私は急いで教室から出た。




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