短編 | ナノ
「好きです」

髪も顔も耳も手もすべてを赤色で染めた彼が伝えてくれた言葉。
震えていた手を見ただけでわかった。勇気を出して真剣に伝えてくれているのだと。

私が口を開けようとした瞬間にいなくなってしまったのは笑ったけれど、そういうところも彼らしいのかもしれない。 

「はっ、はぁ……」
「どうして……?」
「ま、まって」

裏庭で見つけた赤色はとても綺麗だった。
肩で息をしながらゆっくりと彼に近づく。

「ごめん、まだ心の準備が」

だから、と声を詰まらせる古里炎真くん。
息が整ってきてやっと彼の顔を見れた。
私のほうを見ようとしない顔に両手を添えてこちらを向かせてみせた。

「全部真っ赤だね」

私の言葉でさらに赤くなっていく。

「だって、久しぶりのみょうじさんだもん」
「たぶん私も真っ赤になってるかも、好きな人と触れ合ってるから」










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