短編 | ナノ 何も言わない雲雀恭弥のほうをちらっと見ると、向こうもこっちを見ていたようで視線が重なった。
「あ、の」
「名前」
なんだかそれが恥ずかしくって声をかけようとしたら遮られる。
なんだろうか。私は首を傾げながら雲雀恭弥を見つめる。
「君の名前、教えて」
はっきりとした声だった。
「みょうじ、なまえです」
戸惑いながも自分の名前を言えば、雲雀恭弥は「そう」と言い、小さく笑った。
「君のこと覚えておくよ」
夕陽に照らされているせいなのか、彼の顔がやけに赤く見えた。
prev
×