短編 | ナノ どれくらい経ったのか、私はいつの間にか寝ていたようだった。
重い瞼をあげて背を伸ばす。ぱさりと自分の頬に何かが当たる。
「……?」
なんだろう。
視線を下ろすと見慣れた黒い制服が私の肩に掛けられていた。
どうしてこんな所に?と疑問に思うと同時に、まさかね……と頭を振る。
でもでも、すこーし、ほんの少しだけ気になった私は応接室へと向かった。
応接室の前で手鏡を見る。
目元がちょっと赤いけど腫れてはないし、大丈夫そうだと安心する。
一呼吸置いてからノックした。
「開いてるよ」
顔だけを出してヒバリを見る。
「あっ!!!」
「なに?」
「ヒバリ、ヒバリッ!」
思わず駆け寄ってしまった。
さっきまでのことなんか忘れて、学ランを羽織ってないヒバリに抱きつく。
「ありがとう、ワガママ言ってごめんなさい!!大好き!」
そんな私を鬱陶しそうに、だけどもしっかりと抱き止めてくれたヒバリが呟いた。
「なまえは本当に単純だね」
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