短編 | ナノ 何も言わない私に苛立ってきたのか雲雀さんは早くと目で訴えてくる。
「私、勇気、なくて」
なんとか声を出すも、喉からはかすれた声しか出なかった。
それでも雲雀さんは興味なさそうに私を見るだけで、何も言わない。
なんだか恥ずかしくてまた下を向こうとしたら、顎を固定されてしまった。
強制的に雲雀さんと視線が合う。
え、あ、なに、これ……?
「早く泣き止みなよ」
これ以上ないくらいに顔が熱くなる。
驚きからか私の涙は止まっていた。
「雲雀さん……あの」
「気に入った」
意地の悪い顔をする雲雀さん。
どういう意味なのかわからないけど、この人の顔がこんなの近くにあるのが堪えられなくて目をぎゅっと閉じた。
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