短編 | ナノ
さっきと同じように震える手。
足もまるで地面に固定されてしまったかのように動かない。
目の前にいるのに、一歩の勇気が踏み出せないでいる私。

顔を下に向けた時、手のひらで音を鳴らした袋が目に入った。
これを渡してどうするつもりだったんだろう。雲雀さんは答えてくれないのに意味あるのかな。意味なんて……。

「ただ、好きなだけで」

もう帰ろう。
体の力が抜けていくのがわかった。
自然と溢れてきた涙が床に落ちた時、私の前に影がかかった。

「なに泣いてるの?」
「……え」

全く心配していない、淡々とした声に視線を上げるとそこには雲雀さんがいた。
混乱する私のことなんか知らん顔で雲雀さんは私を見る。

「ねぇ、答えて」






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