短編 | ナノ
手の感触が顎から唇を撫でる、そのゆったりとしたその指の動作にくすぐったさを感じながらも、私は雲雀さんから目を離せない。彼の鋭い瞳は、どこか楽しさを秘めていた。

怒気を孕んでいた声とは違い、まるで間抜けな姿の私が可笑しくて仕方ないとでもいうように瞳を細めている。

「君は誰のものなんだい」

手首を掴んでいた雲雀さんの手が移動して、私の指を絡めとる。
あまりのことに目を見開いてしまった。彼の口角がわずかに上がる。

「雲雀さ、ん」
「そうだよ」

息がかかる。
私の応えに満足したのか雲雀さんは顎を固定していた手を今度は右手と絡めた。

「これからも僕のことだけを考えて」

私のことを見透かしてしまいそうな瞳を閉じると雲雀さんはゆっくりと顔を近づけてくる。
私と雲雀さんの唇が離れるまで、私は何も考えないことにした。







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