O’s | ナノ



-O's-
共有者



私は君に言葉を託した。




オズ〈共有者〉
(運命というには拙く、偶然と呼ぶには浅はかで)
(これは星が与えた、一つの可能性かもしれない)



 相変わらずポケモンには言葉というものがない。耳に届くのは鳴き声ばかりだ。その姿は人のように見えることはあっても、人のように話すことは出来ないのだ。

 とある少年少女の日常は、枕元での「おはよう」の一言で姿を変えた。聞いた者こそ驚くが、話した者はなんともないように、愛しそうに鼻を摺り寄せてくる。“彼等は人のように話せない”。否、話しているのだ。いつでも、どこでも、彼等は我々がするように話しかけているのだ。しかしそれは届かない。遠い昔に隔てられたふたつ。届かないはずの声が届いた瞬間、よく知ったはずの街は、もっとずっと賑やかだった。


「きみのこえがきこえる」


 なんの脈絡もなく、前触れもなく、舞い降りた不思議。それは夕立のように過ぎ去っていくものもあれば、とこしなえに道を共にするものもあった。


「わたしとぼくと、あるいはきみが」


 幾億人のなかの、限られた奇跡を纏うのは、まったくの偶然としか言いようがなく。神の意志すら及ばぬ外側の、母なる星の意志とも言おうか。それとも──…。
 偶然がこまねく運命に、また一人、一人と呑まれていく。


 しかし、光あるところに影はつきものであるということを重々承知しておかなければならない。この奇跡は、黒を孕んでいる。
 世界を蝕む影<ファースト>は、奇跡をも蝕んだ。影等の聲は呪いそのものであった。垂れ流される慟哭に、命は少しずつ翳りを見せていき、耳を塞ぐことはかなわない。遮ることが出来ないのならば、せめて「私」はあなたの名前を呼ぼう。


繋いだ手から未来があふれて、あなたの明日を照らせと願うのだ。



解説



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