初めての行おうとしている性行為に恥ずかしいと彼が呟いた。ベッドの上に座りグリーンの服に手をかけた時のことだった、指先で首筋をなぞり微かに反応した彼を可愛いと称すれば顔を一瞬に赤くさせて僕を突き飛ばした。やっぱ無理だ、と羽毛が圧縮するほど抱かれた白いシーツに顔を埋めてグリーンは呟く。でも少し艶のある声を聞いてしまった僕には今更止めるなんて生殺しは辛かったし、僕が彼の奥底まで触れればどの様に乱れるか。そんな好奇心に歯止めをかけながらも彼を宥める様に僕はそっと声を掛けた。

「何が嫌なの?」
「…お前に情けない顔見られる事だよ」

声音はシーツに吸いとられてしまってか羞恥からかとても小さいものだった。暫しの沈黙がお互いの頭にもどかしさを叩き込んで妙に気まずくなる。グリーンは僕の方を伺う様にちらりと見つめて、僕はこの状況を打破したくて視線が必然的に交じりあった。少し早すぎたかもしれない僕が持ちかけた行為は思春期の思惑を鋭く突き刺したが反って僕らの関係を一度壊すもので。例えるならば恋人という目に見えないラインにセックスという有色のテープを上から張り付ける様な横暴、と言うには聞こえが悪いけれど、穢さを知らなかった今までの僕らを反転させるには刺激が強すぎるものだった。

「…じゃあ僕がグリーンを見なければいいんだよね」
「え…?」
「その代わりグリーンだって僕を見ちゃ駄目なんだよ?」

手元にあったシーツを力に任せて引き裂くと繊維が解れていく音に僕はなんだか悲しくなってしまった。宙に舞う飛び出した羽毛は模索するお互いの思考を遮り彼は呆気に取られていた。引き裂かれた白い布をグリーンに差し渡す。もう片方の手には同じ布、これからの行為を予測したのか彼は僕に寄り添って不安げに瞳を揺らした。僕の掌と彼の掌、握った白い布をお互いの視界を遮断して(つまりは目隠しと言うのだろうか)僕は彼にそっと体重を掛け背に広がるベッドへと押し倒した。視界は塞がれ手探りで彼の唇を探し其処に熱い息を寄せる。何も見えていないことに安堵しているのか彼は僕の背中に腕を回して積極的に僕を求めた。隙間からくぐもった息と唾液がこぼれ落ちるのも他所に僕らは夢中になった。誰か止めてくれればいいのに、この崩壊を。誰か切ってくれればいいのに、瞼に纏われた其れを。前者と後者の極端な思いの違いに惑わされながらも僕は感触を頼りに彼の下肢へと掌を滑らせた。


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