約束というものが嫌いだった。

約束するからとうんざりとした表情で絡めようとした小指が後々裏切ることは目に見えているので僕は人差し指を差し出すのだ。どうしてって顔が不愉快だ。兄ちゃんは嘘吐きなんだから、こんな一瞬の小指の絡め合いで約束が守れない事なんて知っている。口頭での約束も指を切るそれも、無意味なのだとこの間知った。僕の「行かないで」と云う言葉をどう受け取っているだろうか。これが彼に通じた事は無い。真剣に取り繕って裾を引っ張っても、切ない声で媚びて強請っても何も変わらない。僕はどうやって繋がりを求めればいいのか。だから不器用な手探りで、したことも無いことを知ったかぶりして彼の興味を引いた。知っているかとの問いかけに彼はにこりと笑う。無理やり導いた彼の手先を舐めた、約束をする筈の指に僕をどろどろに溶かさせるのだ。

「約束なんていらないよ?どうせ守ってくれないんだし」

笑顔を取り繕ってみたけどきっと僕は余裕の無い顔をしている。でも彼自身もいつもとは違う表情なのでそれはそれ相応と言うことで。彼の指が濡れたのは僕の其処を触らせたから。僕の指が濡れたのは彼の舌に触れたから。濡れた指を絡め、これは本当の約束であるのだと彼に刻みつけたので明日の朝は彼は僕の隣にいることだろう。(そう錯覚したフリをする。)
舌を絡めて得たものは特別無かった。只体温の差が酷く僕を痛めつけた。約束を果たさずにまた僕の前に現れたのなら不要な舌を奪ってみせようとそれを甘く噛んで示唆させる。締め付けられたのは僕の快感に浸ったそこからの指か。彼は目を伏せる。

「何がしたいの」
「近親相姦って知ってる?」
「僕に特別視されたい訳、グリーンがいたんじゃないの」
「あいつはいいんだよ」

グリーンがいる。そう言われて何も思わない程僕は冷めた人間でも無いし、悪いと思う気持ちはあった。じゃあなんでこんなことという矛盾した考えは僕自身を混乱させる。優しいグリーンと冷たい兄ちゃん。僕の事を好きでいてくれるグリーンにすがればこんな思いはしないのに、常に彼を追う事を選んだ僕は、こういうのなんて言うんだっけ。今日もブラックアウトした思考の中で無意味な約束を交わす、果たされ無い事なんて知っている。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -