冷房器具の無いこの部屋は言いようも無い位暑いのだけれど、僕達はこの部屋から動く気にはなれなかった。それさえも気だるくさせる暑さと言うか、熱さと言うか、なんとも言えない夏の午後にカーテンを閉めきって空間を孤立させる。僕の首筋を伝った汗が熱で歪んだ空間を写し出す。それを彼の舌に絡められる時には、今まであんなに五月蝿かった蝉の鳴き声も止まった様に錯覚するよ。熱いのは僕だけじゃなくて彼も、その舌から広がる温度に頭がクラクラと回り、僕は薄い蜃気楼越しに揺れる彼の目を見つめる。空間の暑さじゃ無く、身体が火照るこの熱さは互い違いに指を絡ませ繋がれた掌のせい?汗を舐めた彼の舌のせい?それとも僕が今直ぐにでもグリーンにしたいことのせいかな。熱い舌が隠れる彼の口内に指を侵入させて、唾液で滑るそれを優しく親指と人差し指で捕らえた。行動に意味や思考なんて無いのに、僕の気儘な仕草に吐かれる息が熱いのは暑さのせい?僕のせい?目と目が合う。何の合図かキスをした。だってグリーンが目を閉じたから、彼はキスする時に目を閉じるから、指越しに舌で触れ合った。熱い、何度目かのそれを思う。彼は僕の指と舌を舐める。僕は息と舌の際を、誰も触れた事の無い其処を、熱い唾液で濡れた舌と息を奪って。全部欲しいと思うのは、全部僕のものにできると確信できるのは何故なんだろうと思うと、やっぱり夏の午後の暑さのせいだということにしておきたい。グリーンの首筋を汗が伝う。ぱた、とシーツの上に落ちる軽い音が昨日の夜を思い出した。そうだ、昨日もこんな汗が滴って、僕は彼に触れたんだ。閉じれない口のその中に、僕の指が入った。挿った、昨日の夜と同じ。僕もグリーンも熱いのは、さながら昨日の夜に体感したあの理由。
カーテンを閉め切った部屋は酷く暑い。麦茶が注がれていたコップの中身も溶けきった氷のせいで不味く薄まっている。結露が滴る表面を流れる雫がテーブルに落ちたその音が昨日の夜に似ていた。シーツに染み込まれていく汗に似ていた。僕の髪から雫が飛んだのは彼が僕に抱きついたから、触れ合った身体の境は38℃。


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