ただいまと言う優しい声が玄関から聞こえるのが、一日で一番怖い。階段を上がる音が段々と大きくなり、部屋のドアが開く。お帰りって言うのが事が始まる合図で、見えない手枷に依存する俺は何の抵抗も無く彼を受け入れる。彼の好きな様にさせて、彼の求めることを従順にこなして、媚びて媚びて強請って…それを知るジョウトの少年は俺に狂ってると言った。身体を見せて下さいって言うから、少し戸惑ったけどいつもの様に服を脱ぎ捨てる。散らばる鬱血痕と噛み痕を見て、僕には理解できないと俺に非難を浴びせる。なんだ、こいつ何もわかってない。それから彼は俺に、好きでした、と過去形の告白を投げ付けて何処かに行ってしまった。また俺にとって大切だったものが、俺を避けて逃げていく。
おやすみと言われるまで俺は彼の玩具にされる。時計の短針が二を指す頃には、ただいまの時の恐怖感が消えてしまう程蕩けてしまうからだ。今日もされたい放題、何か日中嫌な事でもあったのか、何時もより少し荒々しいセックスが普段満たされきれない処まで埋め尽くしていく。足の爪まで染みる快感に俺は声を上げた。俺を猫の様に可愛がるレッドはあんまり好きじゃない。頭なんて撫でないで欲しい。彼は何を見ているんだろう。お前が必要な可愛い玩具は、情なんて求めていないのに。
薄い合成ゴムが俺達を隔てる。ミリ単位のそれが俺達を隔てる。男の俺は勿論妊娠なんてしないから不必要な物なのに。じゃあそれは何の為だと考えると、玩具の俺も流石に泣きたくなった。
ただいまが今でも怖い。逃げ出したらいいのに、俺はこいつの部屋を未だに抜け出せない。所詮は言いなりの、彼の可愛い玩具にしか俺はなれなかった。


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