機械を通して聞こえる声にひたすら耳を傾けた。ノイズ混じりの、けれども良く通る低めの声。鏡に添えられ、濡れた指先が作り出した精液のラインはもう一人の俺の顔を歪めた。只でさえ酷い顔をしているというのにこれ以上歪めて堪るかと、それを口実にして冷たい鏡に舌を這わした。俺の舌が熱すぎてあいつのものを舐めている感覚に陥る。実際に奉仕なんてした事は無いが、それが安易に想像される程に俺は異常な興奮を味わっていた。

「どうかした?」

会話が途切れたのを不思議に思ったのか、床に置いた携帯機器から質問を投げ掛けられた。

「これくらい熱いのかなぁ」
「…何の話?」
「お前のを舐めたらどんな感じなんだろうって」
「………」

彼が無言になる、いや、元から口数は少なかったけれど空気が変わった気がしたのだ。目を閉じて再び鏡を舐めたら、独特の苦味が余りにも甘く変換された。想像上の彼の柔らかいあそこに歯を立てて抉ってしまいたくなる。蜜を啜って生き繋ぐだけの生き物に堕落してしまえたらどんなに楽だろうか。もう今すぐにでもこんな空蝉と化した部屋を出て、粘膜を重ねて混ざり合ったそれを飲み込んで、名前を呼ばれたい。彼に言葉で丁寧に身体を玩ばれてから、沢山名前を呼ばれたい。機械に変換された音なんて只のガラクタでしかない。価値なんて無い。機械はグリーンと呼ぶ、疑問符を付けて、俺を心配する。俺は勝手に喘いで、それは機械を通して彼の空間を震わすだろう。
レッド、と声ですがり付いたら、彼はうん、わかったからと俺の全てを見透かした様に優しく応えた。下らないと称したこの機械も、思いを伝えられる事ができたのなら上出来だと思う。

「明日会いに行くよ」

だから、もう今日は早く寝たら?そう言われた瞬間に思い出したのは彼が去る夜の出来事だった。みっともないなあ、俺。首筋を擽った柔らかい髪よりも、腰を撫でた冷たい掌よりも、初めて挿れられた時のあの数秒の痛みが、気持ち良さが脳裏に浮かぶよ。
それを想像したら達したんだと告げたら、明日彼は俺をどんな風に貫いて滅茶苦茶にするんだろう。

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