バチンと一瞬で薄い耳朶を貫いたのは赤いピアッサーで、そこから広がる痛みは俺の神経を麻痺させた。痛みに何を求めているのか自分自身わからないけれど、それを味わう度に脳裏に現れるのは幼馴染みだった。この痛みは彼が去る夜に交わった時の、初めて挿れられた感覚によく似ている。尖った鉄の針が無遠慮に身体を貫く感覚が、去勢を張って嫌だと言った俺を無理矢理犯したあの感覚によく似ている。譫言で痛いと言い続けても、気持ちいいんだろうと囁かれれば本当にそんな気がした。暗闇に溶ける不規則な息使いも爪に引っ掛かる背中も皆々、気持ちいいんだろうか、だって俺はあいつに痛い事されて蕩けてしまいそうだった。痛いが気持ちいいに変わったのはあの日からだ。
貫通した耳朶の穴に華奢な赤いピアスを通す。無理矢理開けられたそこに鉄針を通す感覚は虚しい自慰を思い出させた。自分で解して、自分で無機物を挿れたあの感覚に酷く似ていた。圧迫感と痛みこそ同じだったけど温度だけは紛い物。冷たいそれは只震え続けるだけで俺を満たしてくれることは無い。頂戴っていくら強請っても自分の指を添えて動かす事以外には刺激をくれる事は無かった。そんな一人遊びは一晩で終わった。もう、飽きちゃった。

思いきってあいつに電話してみた。絶対出ないだろうと思っていたけれど、三回程のコールで懐かしい声が鼓膜を貫いた。

「…どうしたの」
「どうかしてたら、どうにかしてくれるのか?」
「場合によるけど」

じゃあ、

「…痛くしてくれよ」

寂しいんだ、と後付けしたらレッドは暫しの無言の後に途切れ途切れに俺に命令をした。シャツの釦を外して、ズボンも脱いで、気持ちいいとこ触ってご覧って、それに言いなりになる俺は本当どうにかしてる。俺は痛い位強く秘部を弄った。鏡の前に座り込んで自分の姿を見るとみっともない顔をしている自分と目が合った。ほんと淫乱、って電話越しの彼が嘲笑いながら呟く。消灯を落としきった室内の鏡に移る俺の口元が、その通りに動いて罵られた気がした。お前だって自分で触って喘いで、あいつの声に興奮して、一人でヨがって、どうしようも無い淫乱のくせに。
挿れた指が堪らなく熱くて、あいつのものと錯覚した。声を抑えようと無意識に鏡の中の自分の口を掌で塞ぐと、冷たい表面にぬるりと淫液が滑った。

これが彼のものなら良かったのに。


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テーマ「人外ファンタジー」
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