2011/04/14 現パロ後輩綾部SS まだ本腰入れて書けないかわりに。完全に趣味の話。 広いショッピングモールをひとしきり回って、十分満足した後に駅前のファーストフードに入った。 ドリンクと、今割引になっているポテトのLサイズを頼み、二階のスペースで雑誌を広げながらひと休み。 久しぶりにいい物が買えたと、満足しながらページをめくっていると、短い振動が二、三度。メールである。 誰からかと思えば、ゼミの後輩である喜八郎からだった。 用件は一言、『迎えに来て下さい』 「…なんであいつは私を使いっ走りにするのかしら…」 少なくとも私は喜八郎より先輩で、上記のメールを送られる覚えはない。…ないのだが、喜八郎は私が大学へバイクで通学していると知るや否、頻繁にこのようなメールを送ってきた。 当然、私は了承するつもりはなかったし、喜八郎には二人乗りの怖さを十分教えてきた。なのに喜八郎はいつの間にか、ちゃっかり自分のヘルメットを用意して、駐車場に現れた私に向かって「遅い」とのたまったのだ。 …不思議ちゃんとは聞いていたけど、まさかかなりの自己中でもあったとは…。 それから喜八郎は幾度となく私のバイクに跨がるようになった。 通学の足が必要なら、自分も免許を取ったらどうかと言ったこともあったが、「僕は取るつもりありません」と一蹴されてしまい、完全に下僕扱いである…。 このままではいかん、『今友達の家にいるから』と返信しようとしたところ、突如目の前の席に見慣れたゆるふわヘアーが現れた。 「………」 「こんにちは、先輩」 「…こんにちは。喜八郎。どうしてここに?」 「店の前に先輩の愛車があったので、きっと一人でポテトでも大量に食べているんだろうなと思ったんです」 「まぁ…そこは否定しないけど…って、勝手に食べないでよ!」 「少しくらいいいじゃないですか。これ全部一人で食べたら確実に太りますよー」 「ぐぅっ…!」 痛いとこをついてこないでよ…自分でもポテトのカロリーは考えないようにしてたのに。 喜八郎はそう言うと、我が物顔でポテトをつまみ始めた。 自分のものは滅多に分けてくれないくせに。 「あ。先輩、ジュースも飲みたいです」 「それくらい自分で買ってきなさいよ!!」 しばらくファーストフードで時間を潰した後、席を片付ける私に喜八郎が言った。 「先輩、そんな服も見るんですか?」 「え?」 「その雑誌」 「あぁ…そろそろ暖かくなってきたしね。表紙可愛いなーと思って買ったんだけど」 「その中身はまたズボン?」 「…喜八郎、あんた目ざといわね」 「だってその袋、よく先輩が行ってる店のでしょう?」 喜八郎は椅子に置いてあった袋を指差すと、さも当たり前のように言った。 私はそれをリュックサックの中にしまいながら、肯定した。 「実際スカートなんて履く機会がないしね。バイクは長袖長ズボンが鉄則だし」 「そういえば、去年の夏は学校に来た途端倒れてましたよね」 「あんたはいらんことばっかり覚えてて…。そうよ、夏は暑いし冬は寒いもの。特に夏はエンジンが熱持っちゃって…」 「春と秋は?」 「春は山に入ると虫がつくし、秋は濡れた落ち葉でタイヤが滑る」 「全部ダメじゃないですか」 「だ・か・ら! 元々大体バイクなんて、趣味じゃないと乗ってられない代物なの! それなのに無理してあんたを後ろに乗せてやってんだから、感謝しなさいよね!?」 「ありがとうございまーす」 喜八郎は飄々と答えると、さっさと店を出てしまった。 あの子…本当によくわかんない。 何がしたいんだか…。 ヘルメットをかぶり、グローブを装着した私は路肩に愛車を移動させ、準備が出来たところで喜八郎を後ろに乗せた。 「足、しっかり挟んでよ」 「大丈夫でーす」 「はぁ…あんた、ほんとに免許とったらいいのに」 そしたらどんなに私が楽になるか。 …左右確認、合図出して右後方を確認しながら発進っと… 「でも僕、以前教習所に行った時、普通車の教習も断られてますから」 「は!?」 「適性検査っていうので圏外だったんですよね。教習所の方から無理ですって言われてしまいました」 「ちょ…それ初耳だし! いつ言われたのよ!?」 「うーん…年が変わる数カ月前だったと思います」 「それってもう大分前じゃない!!」 何で言わなかったのよ! 普通車を教習所で断られるレベルだと…確かに二輪は無理だろうけど… 寝耳に水ってこういうことね。 なんとなく、変な子だと思ったけどまさか適性検査で落とされるとは…むしろそんな人っているんだ。 「別に僕は何も困らないので言いませんでしたけど」 「いやいやいや…あんたが困らないのは私をアテにしてるからでしょ」 「バイクだって、先輩みたいに200kgもあるのを引き起こせないですよ。僕ゴリラじゃないですから」 「ちょっと待ちなさい、それは私がゴリラだと言ってるのかしら!?」 「筋肉の話ですよ。なんとなく」 「意味がわからない!!」 確かに、私は喜八郎が出来ないという200kgのバイクだって引き起こしできるけど…そもそもこれはできないとバイクに乗れないんだから仕方ないじゃない。ってか引き起こしなんて慣れなんだからコツさえ覚えれば誰だってできるっての! 「あのねぇ、喜八郎…!」 これはもう、一度きっちり喜八郎と話をつけないとダメだと思った私は、信号待ちをしている間に口を開こうとした。が、それよりも早く喜八郎が言葉を紡いだので、私は何も言えなくなってしまったのである。 「僕、先輩の後ろに乗るの好きですよ。これからもこの席は僕のために空けておいて下さい。でも、たまにはスカートを履いてるところも見たいので、今度は電車で遊びに行きましょう」 「……え、?」 「先輩が女の子らしい格好をしているところを見てみたいです」 それって… 喜八郎の突然の言葉に混乱する。 だって、私たちはただの先輩後輩で…私が喜八郎の足の代わりをしてたけど、それ以外は何ら変わらないはずなのに… それって、そういう意味でとらえてもいいのかな? 喜八郎は私のこと… 「先輩、青ですよ」 「!」 「ちゃんと安全運転でお願いします」 「っ、わかってるって!」 クラッチを握ってローからセカンドに入れる。 私が色々と考えられるようになるのは、喜八郎を送り届けてからだ…と思った。 ※※※※※※※※ 多分続かない。 今日も今日とて大型二輪教習で何度落車したことか…クラッチかたくて左手いたいしあちこち筋肉痛です。普通二輪の免許はエイプリールフールに取得しました。…これ嘘じゃないよね?といまさら… そしてお返事してなくてすみません(>_<) |