「Ms.怜宮はどう思うかね?」


ホグワーツの廊下を歩いていると、ファッジが梗子・怜宮にそう聞いた。



「……何がでしょうか」

「ハリーたちの言っていることさ。……無茶にもほどがあるとは思わないかね?」


「……特には何も」



梗子・怜宮が無表情に言い放つと、ファッジは不快だと言わんばかりに顔をしかめていた。



“せっかくこちらが下手に出ているというのに”、ファッジの心情はまさにそれだろう。



「そ、そうかね……とにかく、ディメンダーを連れて来てもらったら、すぐに『キス』の執行だ……全く、このブラックの事件は、始めから終わりまで、全く面目丸つぶれだった。魔法省がついに捕まえた、と『日刊予言者新聞』に知らせてやるのが、私としてもどんなに待ち遠しいか……、ああ、そうだ。スネイプ、新聞が君の記事を欲しがると、私はそう思うがね……それに、あの青年、ハリーが正気に戻れば『予言者新聞』に君がまさにどんなふうに自分を助け出したか、話してくれることだろう……」


ポッターの話は置いておいても、悪い話ではないと思った。



「……それでは私はご依頼通りに」



梗子・怜宮は今までの話の流れを一切汲まずにただただ淡々とそう言って、我々から離れて一人、ディメンダーのもとへ向かった。

恐らく、今までの話など、取るに足らないことだったのだろう。



「……スネイプ、彼女は……」


後ろ姿を憎々しげに見ながら、ファッジは聞いた。


「わが校の東洋魔術の教授ですが……?」

「……生意気だと思わないかね?日本の陰陽師の頂点だか何だか知らないが……彼女には私に対する敬意と言うものが無い」


どこまでも権威とか体裁を気にする奴だ。

梗子・怜宮自身は恐らく、この男に何とも思っていないだろう。

それが、悔しいらしい。



「そうですかな?」



その時、ディメンダーを呼びに行っていた筈の梗子・怜宮がそう時間も経っていないというのに何故か戻ってきた。



「……Ms.怜宮?」


「ディメンダーを呼びに行ってももう意味はないかと……シリウス・ブラックの気配がホグワーツから消えました」


「は……?どういうことだ……?」


「……用済みですから、私は帰ります」


「まて!どういうことだ?」


気配が消えた、それはここからいなくなった、そう言うことだろうか?

嫌な予感がし、ファッジと急いでブラックが閉じ込められているはずの場所へ行ってみれば、そこはもぬけの殻だった。



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