監督と一緒にいると、どきどきしてうまく話せない。いっぱい伝えたいことがあるのに、恥ずかしくて言えない。
いつも、ちゃんと伝わっているのか不安で仕方がないけど、監督の声を聞くだけで安心するんだ。

ふと、改めて考えてみると一つの結論にたどり着いた。


(オレ、監督に甘えてる、)




「つーばき」
「う、あ、はい!」
「何考えてんの?」

途端に、腰に回されていた腕がぎゅっと締まり、項の辺りに監督の唇が当てられ、自分の背筋がぴんと張るのがわかった。
それに気付いたのか背中からクックッと小さな笑い声が聞こえる。

「わ、笑わないで、下さい!」
「だって、おまえね、こんくらいで緊張しちゃって」
「だ、って…!」
「これよりもっと恥ずかしいことしてんのに」
「か、んとく!」

監督は今度こそ大きな声で笑う。
頭の中でリピートされる監督に言われたことを振り払って真っ赤になっているであろう頬に手でぱたぱたと風を送る。
監督は一通り笑って満足したのかまた、さっきと同じように後ろから腰に腕を回した。

「で、何考えてたの」
「え、?」
「さっき」
「あ、っと、何でもない、です」
「ふぅん、」

明らかに納得してません、って感じの声色で言われて少し焦る。
監督は一緒にいる時に考え事されるのが嫌だって前に言ってたから。
さっきよりも強く回された腕がそれを物語っている気がした。
言った方が良いのだろうか、この場合…ぐるぐるまた、考え始めた頭にストップをかける。
また監督に見透かされたら、きっともうごまかしは効かないから。

「つばき、」
「は、いっ、っ!」

名前を呼ばれて顔を向けたら、キスされた。
それだけでもう、いっぱいいっぱいになる。満たされる。
監督も、そうなのかな。そうだと良いな。

「ごちそうさま」
「あ、わわわっ」
「何考えてんのか知らないけど、今のまんまで充分だから」
「え?」
「おまえはそのまま素直に俺に愛されてれば良いからね」

それで、結局また、監督の優しさに救われるんだ。
胸のあたりがほくほくして、想いのメーターが備わっているとしたらもう振り切れちゃってる。
でも、いつも救われてばっかりだと申し訳ないから、少しでもオレの想いが伝われば良いな、と思って自分からも口付けた。



title by.jaune

20100806



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