なんと、字チャに参加して下さった史さんがログを保存して下さってました!
雨の日の岩近、全編公開です。
史さん本当にありがとうございました!




〈前置き〉
近藤さんの色気…岩淵と車でどっか出かけたりして、夕立に振られてあわてて車に戻って、「すごい雨だな」「いきなりでしたね」なんて会話しながら近藤さんの髪とか顎とか雨が伝うのにくぎ付けになってる岩淵
対する近藤さんも、なんとなく岩淵を直視できず、そっけない態度を取ってしまう。


最近多いゲリラ豪雨というやつか、雨はものすごい勢いで、外を歩く人もいない。そもそも雨の勢いが激しすぎて1m先もよく見えないが。
「近藤さん、暖まるまでこれ着てて下さい」
偶然車内に置いてあった上着を近藤の肩にかけ、車の暖房を入れる。
「悪い。」
そう短く言って近藤が上着を受け取る。袖を通して、ふと顔をしかめた。
「でかい。」
「すみません、でも今これしかなくて…」
「あー、うん。良いよ。風邪ひくよりましだし、ありがとな」
機嫌を損ねたと俯きかけた岩淵は、近藤の言葉に顔をあげ、近藤を見た。確かに袖口から手が出切っていない。
「これ、お前の?」
余った袖を折り返しながら聞く近藤に、岩淵は何となく気まずく感じながら、「ハイ…。」と答えた。ちらりと近藤が横眼で視線を送ってくる。
「生意気。」
「っと、すみません、」
岩淵は折り返された袖が逆に可愛いと思い、直視してしまった。袖口から覗く自分よりも細い腕。少しだけ日に焼けた肌。それらをまじまじと見ていた。
「なに?」
近藤が聞いてくる。
「そんな面白いか?」
「…面白いっていうか、」
可愛いです、と素直に言いかけて危うく岩淵は口を閉じた。そんなこと口に出したら今度こそ機嫌を損ねるのは目に見えている。
「ふうん、」
視線が痛い。しかし絶対に言ってはいけないと思い、慌てて目を逸らす。
「……岩淵」
「は、い゛っ!?」
名前を呼ばれ、突然視線を近藤の方へ向けさせられる。顔が近い。心拍数が上がる。
「正直に言ってみ」
「正直に、て。」
近い。近藤の前髪をまだ残った滴がゆっくり伝うのが見える。細められた目元はようやく暖房が聞いてきたのかほんのりと赤くなっていて、不機嫌そうに引き結ばれた唇がちょっと突き出されているのが、ほんの数十センチの距離にある。
「岩淵?」
その唇がゆっくりと己の名を紡ぐのを、岩淵はぼうっと見つめていた。
無意識に、本当に無意識に手を伸ばして近藤の目元に触れる。雨に濡れた頬はまだ冷たい。
「岩淵、」
岩淵の指が近藤の頬を滑る。驚いた近藤に腕を掴まれたところで、岩淵は近藤から離れた。
「悪い」
「すみません」
口から出たのは同時だった。近藤は何を謝ったのだろうと岩淵は疑問に思う。と、近藤が苦笑した。
「何であやまんの。」
「え、と…。」
「お前、なんか俺に悪いことしたわけ。」
「…今日はまだしてません。」
今日はって、と近藤が苦笑した。それからふと顔を覗き込んでくる。
「したいの?」
わるいこと、と囁くような声が落ちてきた。
「っ…」
思わず息を飲んだ。頭の中で正しい答えを探す。どれも外れな気さえしてきた。
「岩淵、」
「は、い」
「考えたって答えなんか出ないんだから、正直に言ってみ」
視線がぶつかる。近藤の目に灯る熱を見た。
「……したい、です」
「…ここで?」
「車、出します」
よし、とそう言って、近藤は少し笑った。一瞬だけ、もったいないことしたかと思わないでもなかったけれど。エンジンをかけなおそうとキーに手を伸ばした、その手首をつかまれた。
「近藤さん?」
振り向きざまに、後頭部から引き寄せられた。
そのまま柔らかい感触が重なる。呆気にとられたその隙間から、するりと舌が忍び込んできた。先ほど触れた頬の冷たさとは対照的な熱さだった。
岩淵が我に返る前に、始まりと同じようにするりと離れた近藤は、呆気にとられている岩淵を見てにっと笑った。
「ほんとかわいいな、おまえ。」
突然のことに頭がついてこない。かわいい、少し、否かなり悔しいと思った。当の本人はイタズラが成功した子供のように嬉しいそうに笑っている。悔しい。
近藤が座席に座り直す。タイミングを見計らって、覆い被さった。
「可愛いのは、近藤さんですよ」
有無を言われる前にその口を塞いだ。
息継ぎの隙間に、てめえ、とか、この野郎、とか、近藤にしては珍しい乱暴な言葉が転がり落ちる。構わずに、角度を変えて何度も重ねる。近藤が一度大きく身じろぎをした。今度こそ殴られるかと思った腕は、予想に反して岩淵の背に回った。
「近藤さん?」
唇が触れるか触れないかの距離で見つめ合う。
「…お前のせいだからな、責任取れよ…」
そっぽを向きながら耳元でそう言われて、熱が、上がる。真っ赤な顔をした目の前の彼に、より一層いとおしさが込み上げてきた。
「それ、俺のセリフです。」
うつむいた近藤を抱きしめて、そう囁く。冷えるからと着てもらった上着が邪魔だと思った。髪はまだ湿っていて冷たいけど、胸元に落ちる吐息は熱かった。
「寒く、ないですか?」
尋ねると近藤は首を横に振った。
上着に手をかけ、肩から滑り落とさせる。湿った、けれど近藤の体温で温もったシャツの裾の下に、そっと手を伸ばした。
「冷たく、ないです?」
近藤は、ん、と小さく息を漏らす。
「大丈夫、だから、」
その続きは声に出さずとも、岩淵を見上げる表情が雄弁に告げていた。
少し冷えた肌に指を這わす。時々肩を震わせて、目を瞑るその姿に煽られた。首に回された腕で抱き寄せられ、唇を合わし、舌を入れる。水音と雨の音が脳内を刺激して目眩がした。
「近藤さん、」
「ん?」
「好きです」
「…知ってるよ」
雨はまだ止まない。



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