「もう一度会いたい」
「…………」

すぐ後ろを歩いていた岩淵の動きが止まる。
嫌な予感がした。それも、さっきよりもずっと悪い。
星野はそれを無視して急いで片付け、岩淵の横を通り過ぎようとしたが、腕を捕まれる。

「…なんだよ」
「なんとかしてくれ」
「ふざけんな」

岩淵も星野を睨み付ける。
もちろん負けじと星野も睨み返した。

「自分でなんとかしろよ」
「出来ないから言ってんだろ。川崎との試合は大分先だ」
「そこまで待てよ」
「待てないから頼んでんだよ」
「……ガキか」
「ガキじゃねぇ」

お互い一歩も引かない。
星野だって、相手が近藤でなければ、多少手伝ってやっても良いと思っている。しかし、近藤なのだ。
近藤は勘が良い上に、賢い。岩淵が会いたがっているということを上手く説明できるかと聞かれれば答えはノーだ。
近藤に口で勝てるとは到底思えない。

「じゃあ、アドレスだけで良い」
「じゃあってなんだよ」
「それなら確認を取るだけだから良いだろ」

星野は暫く考えて、頷いた。
確かに、それくらいなら変に勘繰られることもないだろうと思ったからだ。

「今すぐ」
「は?」
「忘れられたら困る」
「忘れねーよ!」
「…………」

無言で睨みを利かせてくる岩淵にうんざりし、ジャージから携帯を引っ張り出して、岩淵にアドレスを教えることを連絡する。
断られることはないだろうと思った星野は、そのメールを送信した後、岩淵に近藤のアドレスをつけたメールを送った。
横で携帯を開いた岩淵に睨まれる。

「…断らねーと思うから送っとくぞ」
「万が一断られたらどうすんだ。生殺しじゃねーか」
「知るか」

岩淵は、近藤のアドレスを登録し、携帯を閉じ、歩き出した。星野にメールが返って来ない限りメールは送れない。万が一がある。

「何処行くんだよ」
「昼寝だ。まだ練習まで時間がある。どうせまだ返事来ないだろ」
「多分な」

昼寝に向かう岩淵から視線を反らし、自分も部屋へ向かう。
少し歩いたところで携帯が震度し、メールの到着を知らせた。
携帯を開いて、画面を見た星野はなんとも言えない複雑な気持ちになり、溜め息を吐いた。
了解を示す文の後に、近藤自身、岩淵に対して気になることがあったから丁度良いとの文が続いていた。





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