監督は、いつだってチームを、俺を最善の方向に導いてくれる。
導いてくれる、というよりは、監督はヒントをくれるだけで、それを自分達がどう解釈して進むのか、によって良し悪しが決まるのだけど、殆どの場合、良い方向に行く。
それはもちろん、間違った方向に行きそうになったら、フォローをくれるからなのだけど。

(それで、この場合は一体…)

ぎゅっと俺を抱きしめた状態で寝てしまった監督を起こすべきかどうか。



*



「今日行くから」


いつものように練習の後、自主練をしていたら、監督が来た。
よくあることだし、気にしないで(実際はガッチガチに緊張したのだけど)続けていたら、どうしてか、じっと、見られていた、気がする。
気になって仕方がなかったけど、勘違いかもしれないから、そのまま練習を続けて、一段落して落ち着かせていたら、監督が耳元で言った。

「今日行くから」
「え、」
「え、ってお前ね、」
「あ、いやとかじゃなくてっ」
「わかってるって。とりあえずさ、夜部屋の窓開けてとけよ。最近ご無沙汰だったしさー」
「え、えっ、監督!?」

風邪ひかないようにな、そう言って監督は去って行った。
俺はその前に言われたことが頭から離れなくて、本当はもう少しやるつもりだったのに、結局そのまま練習を止めて、寮に帰った。


寮のお風呂に入って、言われた通り窓の鍵を開けて待っていたら、監督が来た。
入って来てすぐ、抱きしめられて、離れて座ってからもすぐ後ろから抱きしめてくれて、そのままの体制でテレビ見ながらお話して、それで、

(返事がないと思ったら、寝て、る)

監督は、俺の背中に額を預けて、熟睡しているようだった。
疲れているんだってことは、容易に想像ができた。ほぼ毎晩、ビデオで敵チームのサッカーを研究してる。
きっと、昨日だってそうだ。

二人きりになるのは本当に久しぶりで、もっとお話したいし、監督が練習後に言ってたことも、やっぱり気になる。
それでも、せっかく気持ち良さそうに寝てるし、起こすのも申し訳ない。普段あまり寝てないであろう分、今、寝てもらいたい。

この体制じゃ寝ずらいだろうと思って、離れようとしたら、思ったよりも強い力で腕が回っていて、離れてそうにない。
仕方なくベッドの上の毛布を手繰り寄せて、出来る限り寒くないように、二人でくるまった。

「達海さん、お疲れ様です。おやすみなさい、」

監督の温もりに包まれて眠れるだけで、すごく満たされた気持ちになれた。




あとがき







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