オフの日でも堺さんの朝は早い。
俺はずるずる眠気を引きずって、ベッドの上でもたもたしてるけど、そんな時、堺さんは決まって、瞼の上に手を翳しながらまだ寝てろ、って声をかけてから部屋を出て行く。
そうやってされると、魔法にかかったみたいに瞼が重くなってきて、結局、次に目が覚めた時には朝ご飯の支度が出来たあと。

これはこれでもちろん良いんだけど、一度で良いから同じ時間に起きて、一緒に朝ご飯の準備をしてみたい。





ほわほわとした意識の中、横でもぞもぞと動く気配がして、慌てて遠のきかけた意識を取り戻した。
いつもみたいにされる前に、上体を起こして堺さんを見れば、驚いた顔をして、寝てろよ。と言った。

「う〜、起きる、ッス、」
「まだ眠そうじゃねーか。寝とけ」
「寝ないッス!」
「……そうかよ」
「あ、堺さん」
「あ?」

おはようございます。…おう、おはよ。
朝の挨拶だけで、心の中があったかくなって来る。
こういうことならもっと前から同じ時間に起きるの頑張れば良かった、な。
(…今日起きれたのは奇跡だけど、)

堺さんが部屋を出て行こうとするのをみて、慌ててベッドから飛び起きる。
堺さんは顔洗って来い、と洗面台を指差して、自分はキッチンへ向かった。
いつもなら言われた通り、洗面台に向かうけど、今日の目的は一緒に朝食の準備をすることだからと、堺さんがいるキッチンへ足を進める。
案の定堺さんは、冷蔵庫から使うものを出していた。

「俺も手伝います!」
「は?お前顔洗ったのかよ」
「まだッス!」
「…顔洗って来い」
「堺さんもまだですよ、ね?」

だって一緒に朝ご飯作りたい…。はあ?
堺さんは一瞬怪訝な顔をしてこちらをみた後、小さくため息をついて、出していた食材を冷蔵庫に戻した。

「次やるから、先にやってこい」
「え、あ、え?」
「一緒にやんだろ?」
「や、ります、っ!」


急いで洗面所に向かって、ばしゃばしゃと顔を洗えば、交代するとき堺さんは、俺がやらなきゃできないのに何で慌ててんだよ、と呆れたように笑った。
言われた通り、引き出しからエプロンを出して身につければ、タイミングよく堺さんが戻ってきて、垂らしたままにしていた後ろの紐を結んでくれた。

たったそれだけのことなのに、本当に嬉しくて、今までやろうとしなかった過去の自分を悔やむ。

(でも、うれしい、)


「にやけてっぞ」
「っ、だって、」
「ほら、これ混ぜろよ」
「うあ、は、いっ!」

渡されたボウルの中身を言われた通りぐるぐる混ぜて、そこに堺さんが切った野菜を入れて、また、混ぜる。

時々触れ合う肩にどきどきしてたら、それに気付いた堺さんがわざとくっついてきて、思わず手から滑り落ちた箸に、二人して笑った。





あとがき




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