(……あ、)


教室の、一番後ろの窓際の席。
つい最近行われた席替えの結果。良い場所を引いたと思う。陽当たりは良いし、風は心地好いし。一番後ろだから、猫背を折る必要もないし。
今でも充分気持ちが良いけれど、外で寝ている彼の方が気持ち良さそうだと思った。

そよそよと緩やかな風が吹く度に揺れる前髪、今日はいつもより少しだけ暖かいけれど、影を作った木の下で、小さな身体を少しだけ丸めて、本当に気持ち良さそうだ。正直ちょっと羨ましい。

「湯沢プリント」
「うん」
「…何見てんだよ」
「ちっちゃい妖精」
「はあ?ああ、なんだ世良さんか」
「羨ましい」
「っつか、授業始まってんのに大丈夫かよあの人」

隣授業誰。多分堺先生。
赤崎と揃って合掌。
きっと後で呼び出しくらって、ごっそり課題を出されて、それで赤崎に泣きつくんだろうな。あーあ。
俺んとこに来れば良いのに。っても教えられることなんて何一つないけど。
数学なんて、足し算と引き算と掛け算が出来れば良いのに。割り算はちょっと難しいからいらない。

「羨ましい」
「なにが」
「なんでもない」「はあ?」

古文の先生が黒板に何か書き始める。
ふわりと教室内に入ってくる風が、陽が心地好くて、意識を手放した。



(セラアァァァ!)
(えっ?えっ?!)
(堂々と昼寝たァ良い度胸じゃねぇか)
(ひぃぃぃ!今!今行きます!)



「あーあ。世良さん、アウトー」
「……寝れなかった」
「お前な…」





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