保健室エスケープの裏側

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朝礼の時間に担任から、担当教師の都合で3限が休みと知らされた時から、フケようと考えていた。
滅多にそんなこと思わないが、なんとなく今日はそんな気分だった。
誰もいないだろうからと思い、授業開始のチャイムが鳴り響く中、一人屋上に向かう。
立ち入り禁止の札なんてあってないようなもので、結局そんなもの無視してみんな好き勝手入っていくのだ。
扉を開ければ、建物内と違って新鮮な空気が肺に流れ込んで来る。
気温といい、風といい、寝るには最適だろうと思ったところで、ばたばたばたと音がして扉に目を向ければ、ばんっと大きな音を立てて開いた扉から、いつも連中が入って来た。

「うるせぇよ」
「良則君サボりとかいーけないんだー」
「人のこと言えねーだろ」
「サボるなら誘ってよー連れないなあ」
「何でだよ」
「寂しいじゃーん」

ねー!とハモる二人に自然と溜め息が零れた。
まともに相手をしてたら疲れるということは3年間で痛いほどよく分かった。
きっと無理矢理連れて来られたであろう堀田が正直物凄く可哀想だった。

「悪ィな堀田」
「あー、まー、たまには」
「そうそう!たまにはサボったって良いよねー!」
「お前昨日も2限フケただろ」
「っつか丹さん常習じゃん」
「石神、そういうお前も一昨日3限フケてただろ」
「あちゃあ、バレてたかー」
「人のこと言えねえじゃん!」
「てめぇらのはたまにじゃねえだろ揃いも揃って!」

テスト前誰に面倒見てもらってると思ってんだよ!
堺さーん!と見事にハモった二人の頭をひっぱたいて盛大に溜め息を吐いた。

「暴力反対!」
「堀田くん助けて!」
「うるせぇ」
「あ、1年生が体育してますよ」
「堀田くんスルースキル上げたね」

逹雄寂しい!今のは二人が悪いですよ。
タンさん堀田くんが反抗期!あら大変!なんて馬鹿なことを言ってる二人は無視して、グラウンドで走っている1年生を見た。多分、短距離だろう。

「相変わらず椿は早いですね」
「ダントツだな」
「そーいえば、1年と言えば、堺。随分世良に懐かれてんね」
「は?」

世良、は今年入ってきた選手の中でダントツでチビだった奴だ。
当初ポジションこそ被っていたが、あいつがびびってたのも分かってたし、特に話すこともなかったから挨拶以外の会話をしてこなかったが、あることが切っ掛けで話しかけられる回数が増えた、とは思う。
しかし、懐かれたとは違うような。

「そうそう。金魚のフンみたいにくっついてるよねー」
「……誰にだってあんなんだろ」
「いやいや。堺さんには特にですよ」
「珍しいことに、堺もちゃんと相手してるみたいだし」
「後輩の世話なんて今まで殆どしなかったのに」
「結構可愛がってますよね」

うんうん、と3人は揃って頷いた。
堀田もそっち側かよ3対1じゃねーか。いじめか。
比較的常識人である堀田が2人の意見に頷いたこともあって、今までの世良に対する自分の態度を思い出す。
通常だ。何ら問題ない。

「無自覚かよ!」
「は?」
「こりゃあ世良、頑張らないとな」
「あ?何言ってんだテメェ」

意味が分からず堀田に助けを求めれば、目を反らされる。反抗期かこのやろう。
まだ2人が何かを言ってる気がするが、もうこの際無視だ無視。相手するだけで疲れる。
休憩する為に屋上に来たのに、むしろどっと疲れた上に、意味の分からないことを言われ、少しだけ自分の態度を改めようと思った。



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