───畑ってさー、カッタンと付き合ってるの?


(わけわからん…)
さっきからずっと、練習が終わった更衣室でシムさんに言われた言葉が頭の中で繰り返される。
元々サッカー上手いのに何考えてるかわからんし、話かみ合わん人やと思っていたけど、突然、ありえもしないことを言われて余計わけがわからなくなった。
変に噂されても嫌だし、あの時更衣室にいたのが俺とシムさんだけで良かった。

「……い゛っ!」
「お前俺と対戦してる最中に考え事とかええ度胸やないか」
「だからって踵落としはないやろ!」
「はっ!」
「お、ま、え…!」
「ええから早く次」

俺が考え事をしてた間に、いつの間にか一戦目が終わってた。もちろん俺の負けだったのは言うまでもない。
勝ったんやし気分良くなれば良いのに、逆に悪くなってるのは、多分本気の相手に勝てたわけじゃないからだと思う。
かといって、本気でやってぼこぼこにしたら機嫌悪くなるし……

(ホンマにめんどくさい奴…)
こんなめんどくさい奴と、ましてや男と付き合ってるなんて勘弁して欲しい。

言われた通り、二戦目をセットして、始める。
カタは基本的にゲーム弱いからそんなに本気でやらなくても勝てる。本人に言ったら口効いてくれなくなりそうやから言わんけど。

……別にこいつと口利かなくても良いのに何の心配をしとるんやろ。自分アホちゃう?
考えてみれば、ここ最近ずっとこいつとおる気がする。オフの度にどっちかの部屋でゲームして、ああ、この間は買い物にも行ったっけか。

(……そらシムさんが付き合うとる思うわけやなあ)


「畑、お前また考え事しとるやろ」
「あ?う、をっ!っぶないやろボケ!」
「ええ加減にせんとシバき倒すぞ!」
「それはこっちのセリフや!」

また降ってきた足を避けて、画面に集中する。今回ばかりは本気で潰す。手加減不要や。機嫌悪くなろうがなるまいが俺の知ったことやない。
お得意のコマンドを入力して、一気にしかければ、上からアカンっ!という声が上がって、ガチャガチャとボタンを押す音が聞こえる。

(でも、機嫌悪なったら、つまらんしなあ…)
口は悪いけど、言い合っているのもこれはこれで楽しいし。
カタの場合機嫌悪なると一切口利いてくれない上に、表情も無表情んなる。そんなん嫌やし、なにより笑っとる方がええし。
いや、意味わからん。なんでいきなりそうなるん。


(だって、これじゃあ、)


「……オラっ」
「え、あ、ああああああ!なんやねん今の!」
「みたか!今日は負けんからな!」
「…っ!」

嬉しそうな声に振り返れば、いつも見ていた憎たらしい顔なのに、何故か、可愛く思ってきて、慌てて目線を映せば、画面上にはゲームオーバーの文字。

(くそっ、冗談キツいやろ、)

シムさんのせいで意識してしまうはめになった今日、夕飯までゲームに付き合わされることに目眩を覚えた。




title by.誰そ彼






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