「また、泳いでたんだねコッシー」



暑い日差しを受けてキラキラと光る水面から上がってきた人物に一言声をかければ、いつものように呆れた声が返ってくる。

「授業だからな。お前もちゃんと受けろよ」
「だって、日焼けするじゃないか。僕は黒くなりたくないからね。まあ、室内プールにでもなったら少し考えるよ」

室内プールになったところで泳ぐ気などほとんどないのだけれど。
それを察したからかコッシーは一瞬怪訝そうな顔をしてから更衣室へと向かう。
もちろんその背中を追いかけた。



「相変わらず君の泳ぎは勇ましいね。見ていて楽しいよ。今度水泳の大会にでも出てみたらどうだい?そうしたら、決勝戦くらいは応援に行ってあげるよ」
「……決勝戦に出る前提じゃねーか」
「自信ないのかい?」
「本職の奴には勝てねーだろ」
「それは残念」

滴る水滴を拭きながら、コッシーはしっかりと僕の話に返事をくれる。
今のだって他の人が聞けばただの戯言でしかないのに律儀に、答えてくれた。
本当に真面目な奴だと常々思う。
時にそれが仇となることもあるけれど。

「何しに来たんだジーノ」
「ん?いや、大したことじゃないよ。ただ、君の泳ぎを見に来ただけさ」
「……そうか、」


どうして更衣室まで来たのかを聞きたいんだろうけど、わざと見当違いのことを答える。
きっとコッシーはそれに気付いてる。
それなのに執拗に聞いてくることはないから、彼の隣は居心地が良いんだ。




20100813





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