ゆらゆらとカーテンを揺らしながら教室内に入ってくる風が心地よい。
次は窓際の席が良いな、と日誌を書きながら思った。



「なんでよりによってオフの日に日直なんだよー!」

偶然日直が一緒で、放課後の二人しかいない教室に世良さんの叫び声が響いた。

「せっかく早く帰れると思ってたのに!なっ!つばき!」
「う、ウスっ」

昨日から放課後何するか考えてたのにさぁ!と言いながら、世良さんは黒板を消している。上の方は目一杯背伸びをして消そうとしているが、下の方みたいにキレイには消えないみたいだ。
やっぱり自分が黒板をやった方が良かったかな、と改めて思ったが、口にはしない。
きっと、ザキさんなら容赦なく言って、いつもみたいに言い合いになるんだろうな…

ザキさんと世良さんの言い合いが羨ましいわけではない。
だけど、二人のように思っていることをはっきりと言葉にして伝えられるようになりたいとは常々思っている。
(なかなか、できない、けど…)


「あー!くそっ!キレイに消えねー!」
「あ、代わり、ます」
「ううう…!」

はい!オレ日誌書く!う、ウス。渡された黒板消しを持って、世良さんがうまく消せなかった上の方を消す。下の方は世良さんがやってくれてたから直ぐに終わった。

「世良さん、終わりました」
「はえーよ!オレあとちょっと!」
「………あ、れ?」

そんなに書くとこあっただろうか、と思って日誌を覗けば、先週日直だったザキさんのページが開かれていた。

「バカサキのやつ、全然書いてなくてつっまんねーよな!」
「あわ、いや、そんな」
「ま、オレもあんま書くことないんだけど…」

何書くかなー。あっと、き、球技大会のこととか…。そ、れ、だ!ガリガリと止まっていたペンを走らせて、スペースが文字で埋まっていく。
三行いっぱいいっぱい書かれた文章を勢いよく締めて、世良さんは終わった!とやはり大きい声で叫んだ。

「あ、じゃあ、職員室持ってきます」
「へ?良いよ。一緒の方向帰んだし、一緒に出して帰ろーぜ?」
「え、あ、」
「もしかして先約いる?」
「あ、いや!いないっス!」
「じゃあ、そーしよーぜ!」


(世良さんの笑顔はお日様みたい、だ)


ニッと笑った世良さんは、カバンと日誌を持って、教室を出ようとする。
はやく!と言われて、慌ててカバンを掴んでその背中を追いかけた。




20100801



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -