ここ最近一番の陽射しを浴びながらピッチでプレーをしていた選手達がダウンを終え更衣室へと帰る中、世良は一人、シュート練習を始めた。
前回の試合も、前々回の試合も、フォワードなのにシュートを決めることが出来なかったことが悔しかったからだ。


「あっちー……」

シャツの裾をばっさばっさと動かし中に風を送る。
タオルを取りに行く時間さえも惜しいので、首元や袖を引っ張り汗を拭いていた。

「おら」
「う、わっ!え、えぇ?!」
「水分補給もしねぇで何やってんだよ」
「あ、あざーっす!…って、堺さん何でいるんすか?!あ!まさか待っててくれたんすか?!」

既に堺は帰ったのだと思っていた世良は不思議に思い声を上げた。

練習が終わった後、堺から家に来ないかと誘われたが、明日オフだから多少無理しても大丈夫!と判断し練習するために普段なら二つ返事で答える堺の誘いを断っていたからだ。

「ちっげーよ!」
「あっだぁっ!なんで殴るんすかぁっ!?」
「お前がこのクソ暑い中水分補給もしねーで練習してっからだよ!」
「飲んでる時間がもったいないじゃないっすか!」
「熱中症ンなって倒れたら元も子もねーだろ!」
「っ、の通り、です……」

世良は堺の言う通りだと、改めて自分のプロ意識の低さを情けなく思いがっくりと肩を落とした。


(また、堺さん呆れさせちゃった……)


「まだやんのかよ?」
「や、今日は、もう帰ります…」
「そうか」
「ありがとうございました」
「おう」
「お疲れさまでした」
「世良」

「はい」と横を通り過ぎる時に呼ばれて、下がっていた頭を上げれば、堺は世良の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「な、にっするんすかっ?!」
「待っててやるから、さっさとシャワー浴びてこいよ」
「まじっすか!?……あ、でも、今日は」

世良の表情が一瞬嬉しそうになったが、ついさっきのことを思い出したのか、また下を向いて口を濁した。
そんな世良の姿に堺は小さく息を吐き、彼の頭を先程とは違い優しく撫でた。

「オレも昔お前みたいにやって、ぶっ倒れてんだよ」
「……え、あ、ええっ?!」
「…なんだよ」

世良は本気で驚いた。
プロ意識の高い堺に限ってそんなことはないと思っていたからだ。

「だって、堺さんが」
「若い頃な!」

「さっさと行って来い!」と堺に怒鳴られ慌てて更衣室へ向かうなか、世良は嬉しくて口元が緩んだ。




title by.融解

20100621



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