(、暇や…)
授業とか教師の言うとることよおわからんし、黒板に暗号ばっか書きよるし。おお、今睨まれた。ええねん別に。だってオレ、サッカーで大学行く予定やし。それか、どっかの強豪クラブからスカウトくる予定やから、進路とか全然心配してへんし。こんな授業受けたって意味ないんやって。わかったか数学教師。名前呼んだことないから忘れてもうた。あー、風が気持ちええ。

「あ、」
「なんや、片山。答える気になったか」
「全然ちゃいます。それに、答えなんてわかりません」
「お、ま、え、は…!」
「オレのことなんか気にせず先進めて下さーい」

おうおう、眉間に皺よってごっつ酷い顔になってんぞ。ま、元から酷いからいまさら何したって大差あらへんけど。

それより問題は窓から見える畑や。なんや、自分、めっちゃ楽しそうやないか。しかもサッカーやん。オレと代われ。ぶっさいくな顔更に破顔させて楽しそうに笑いやがって。羨ましい…。

畑ががーっと左サイドから相手陣地にボールを運んでって、右サイドをみた。もちろん、誰も、いない。まあ、オレやったらあそこにおるやろな、絶対。
結局畑は自分でゴールまで押し込んだ。
頭をぽりぽりとかいて、はっとした表情を見せた後、仲間のところにかけて行って、また、馬鹿みたいに楽しそうな顔で笑っとる。

(あいつ、アホちゃうか?)

最初っから自分で行けばええのに。なんで逆サイドなんかみたんやろ。
そりゃ裏、あいてたけど。

いつの間にか退屈な授業は終わったみたいで、号令なんか無視して教室を出た。教師の怒鳴り声?そんなん無視やろ。
向かうは、アホんとこや。ちょっとからかったろ。








「畑せんぱーい、なんなんあの最後の苦しまぎれのシュート」
「っカタ…!お前見てたんか?!」
「はっ!あんくらいのシュート、オレなら余裕で打てるわ!」
「裏があいてたやろ!」
「あんなん素人が走ってくるわけないやろ!アホか!」

畑は図星を言われて詰まった声を出したあと、ふと何か思い出したかのように口を開いたかと思ったら、結局なんも言わずに口を閉じた。

「言いたいことあるんなら言えや」
「あー、そんな大したことちゃうから。気にしいな」

畑はバツが悪そうな顔をして、何かをはぐらかすように言うた。そんなんでオレが騙されるわけないやろ。何年の付き合いやと思ってんねん。オレを見くびりすぎやどあほ。

「どうせあれやろ、またしょーもないことやろ」
「しょーもないことちゃうわ!ついいつもの癖でお前探しただけや!」
「……は?」
「お前裏取るんうまいやんか。だからつい、なあ…。なに赤くなっとるん?」

顔を覗き込んできた畑の頭を叩いて深呼吸。畑の文句なんか聞こえん。無視や、無視。
(…こいつ、絶対アホや。救いようもないどあほや、)

癖で探したとか、なんやねん。全然意味わからんわ。しかもさらっと誉めやがって。そんなん急に言われたら普通照れるやろ。そら畑から裏パスよく来るけど、そんなん、偶然、タイミング良かっただけやろ?

偶然……いや、ここ最近の試合、オレのゴールほとんどこいつのアシストからちゃうか?いや、そうや。ほとんどどころか全部こいつのアシストや。
(そう考えると、なんや、腹立つ…)


「おーい、カタ?」
「絶対!お前になんか負けんからな!」
「は?いきなりなんやねん!オレかて負けんわ!」


絶対、負かす。
次の試合、こいつのアシストでゴールちゃうて、自分でとったる。
今にみとれどあほ。



(っつーか、お前、先輩に対しては普通敬語やろ)
(今更オレが敬語なんて使ったら気持ち悪いやろ)




20100904



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