(あああ!堺さんだっ!)


次の授業のために3年生の廊下を歩いていると、部活の、同じポジションの先輩である堺が前方にいることを確認した。
堺にとても憧れを抱いている世良は、部活以外の場所で会える度に、幸せな気持ちになっている。
それもそのはず、堺は必要最低限教室を出ることは殆どないからだ。
そんな堺が廊下でサッカー部以外の先輩と話している姿は、世良にとってはレアだった。

「世良さん、何で止まってんスか」
「赤崎うるさい、黙ってろ」
「はあっ?!」
「ざ、ザキさん、落ち着いて下さいっ」

椿に止められた赤崎が横でぶつぶつと文句を言っているが、世良は気にしない。
友人達と楽しそうに冗談を言い合って笑っている堺の姿を見るのに集中しているからだ。

「ちっ、置いてくからな!」
「あんでだよ!置いてくなよ!」
「あ、堺さん、っチス」

椿の一言で言い争いながら歩いていた二人もぴたりと止め、挨拶をする。
堺はおう、と一言返しただけで、また友人の談笑の輪に戻って行った。

世良は内心かなりどきどきしていた。
挨拶を返してくれた堺と目があったからだ。
しかも、



(っ手、振ってくれたっ!)



20100611



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