堺さんがお医者さん、世良が患者さん

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目を開ければ真っ白な天井が目に入る。
携帯は使えないから、脇のテーブルに置かれた時計を、まだ少し寝ぼけた頭で手繰り寄せて時間を確認すれば、もう昼前だった。

起きて、サンダルを足にひっかけて病室から出る。
あいにく、昼飯の時間までまだある。このままベッドの上でじっとしているのは退屈だから、少し外を歩こうと思った。



がらがらと点滴を引き連れて病院の回りを歩く。
お日様がぽかぽかしてて気持ちが良い。
こんな日は、屋上で昼寝に限るけど、この間、それをやったら先生に怒られたからやらない、っていうか、やれない。
あの時の先生は本当に怖かった。

丁度よく木陰になっているベンチに座ってぼうっとする。
お日様はあったかいし、風がそよそよしてて気持ちが良い。
(眠くなって、きた)


「ふわぁ、」
「寝るなよ」
「う、あっ!堺先生!なんで?!いつの間に?!」
「あ?今さっきだよ」

案の定寝ようとしやがって。まだ寝てないっす!寝る気あんじゃねーか!あー!今のは間違いっす!
堺先生は、オレの横に腰を下ろして大きなため息を一つ吐いた。



堺先生は、オレの主治医の先生で、目つき悪いし、金髪だし、口悪いし、ですっごく怖いけど、本当はすっごく優しい先生。
最初はもう怖くて怖くて仕方がなかったけど、堺先生が子供の相手をしている時に、優しい顔をしているのを見て好きになった。
いわゆる一目惚れだ。
不謹慎だけど今回ばかりは病気になった自分の身体に感謝した。


「堺先生は何してるんすか?」
「昼休憩。天気良いし外で食べようと思ったら、おまえがふらふらしてるの見かけて追ってきたんだよ」
「ふらふらなんてしてないっす!」
「してたっつの。ったく、落ち着いてきたからって調子ノってるとまた悪化すっからな」

これに関しては前科があるから返す言葉もない。
一度、大丈夫と思って薄着で外に出て、散歩をしていたら次の日熱を出したことがある。
そん時は、親だけじゃなくて堺先生にもこっぴどく怒られた。
(病気の先生が患者にあそこまで怒るなんて思ってなかった、)


がさがさと、隣で堺先生がコンビニの袋からみかんのゼリーとスプーンを差し出してくる。

「おら」
「くれるんすか?!」
「これ食ったら大人しく病室戻れよ」
「あっざーす!」

ぺりぺりとゼリーをあけて、口に含む。まだ、少し冷たくておいしい。
それに、大好きなみかんだし。

堺先生はなんだかんだいってオレのことを甘やかしてくれる。
前、退屈だって言ったら漫画持ってきてくれたし、今日だってゼリーくれたし。

「ごちそーさまでした!部屋戻んます」
「おう。大人しく寝とけ」
「はい!」
「また午後回診行くからな」

ちゃんと寝てろよ。そう言って頭に置かれた手に、なんだか少し体温が上がった気がした。






title by.融解





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