「アンタ、死にたいの?」 首筋に感じる冷たい刃。 皮を斬るか否かのところですん止めされているそれを向けてくるのは、まだ年端もいかない幼い少女。 愛らしい顔立ち、アクアマリン色の軽くウェーブがかかった長髪、カイヤナイトのように青い瞳。 こんな戦場には似合わなさすぎる容姿。 だが、そんな容姿とは裏腹に、少女は鋭い殺気を送ってくる。 「まさか…んなわけねぇじゃん」 そう薄く笑いながらいうも、 俺は刃から逃れようとはしなかった。 ドクン、ドクンと波打つ鼓動。 生命の危機を感じて本能的に滴れる冷汗。 「…じゃあなんで逃げないのよ。このままじゃアンタ私にやられるのよ?」 そんな俺に、少女は訝しげにまるで気味悪そうな冷たい視線を送ってくる。 俺はぶっちゃけ別にそれでも構わなかった。 “お前に殺されるなら本望だ”だなんて陳腐な台詞をいったら、きっとお前に笑われるだろうな。 ま、俺もまだ死にたくはないしな。 (…俺も堕ちたもんだな…) 少女とはいえ仮にも敵である相手。 それなのに俺は、心を奪われてしまった。 でも、それは叶うはずのない恋。 だって俺達は殺し合う運命にあるのだから。 嗚呼、もうちょっと早く出会えてたら。 “白蘭よりも俺が先にお前に会えてたら…” 俺達はきっとこんなことにはならなかったのかもしれない。 そんなくだらない事を考えても、無駄なことはわかってる。 だけど、この“愛”は決してお前には届かないから。 だから俺は… 「愛してる」 “刃”という“愛”をお前に突き立てるんだ。 end (俺がお前をとめてやるから) |