探検してたら見つけた、真っ白なお部屋に小さな女の子。
この部屋でずっと一人なんだと、寂しそうに笑う女の子に私は小さな約束をした。


「ユニー。」

足取りも軽やかに、今日もいつもと同じ時間に部屋の扉を叩く。
どうぞ、と言う声が聞こえてきてから扉を開けると真っ白な部屋の中で小さな白い女の子がお茶の準備をしていた。

「今日は何?」
「アップルティーです。お砂糖は?」
「ふたつ!」

心待ちにしていたと優しい笑みを浮かべるあの子の問い掛けに、いつも通りに答えながら部屋へと足を踏み入れた。

あの子がお砂糖を準備している間に席に着くと小さなテーブルの上にはクッキーが乗ったお皿が準備してあって、紅茶と一緒に甘い美味しそうな香りを作り出していた。

正直紅茶の事なんて全く分からないから、どんな種類にでもお砂糖を入れてしまう事が間違っているのかすら分からない。
それでも私よりずっと詳しいあの子は、何も言わずにちゃんとティースプーン2つ分を綺麗な色の紅茶に混ぜてくれる。

「はい、どうぞ。」

「にゅにゅー!いっただきまーす。」

それが嬉しくってにこにこと笑うと、あの子も嬉しそうに笑う。

「美味しいですか?」

「うんっ。」

「それは良かった。」

ほら、またにこり。
…でもね、ブルーベルは知ってるんだ。

「ユニの紅茶はすっごく美味しいよ!ずーっとずっと飲んでたいくらい。」

「………、」

一瞬言葉に詰まったあの子は、綺麗な手でカップを持ち取り繕うように口を付ける。

そんなあの子をちらりと見てから、美味しそうなクッキーへと手を伸ばす。
今日はこんがり焼けたチョコチップ。

「だからユニは、ずっとブルーベルの為に紅茶を準備するの。」

「…ブルーベル、」

「いなくなったりしちゃダメだよ。そんなの…許さないんだから。」


(ユニは、あの部屋から出たいんだってさ、)
わたしがユニを見付けた日に白蘭はこっそり教えてくれた。

(真っ白いお部屋から出て、元居た場所に帰りたいんだって。最近は抜け出そうなんて考えてるみたいでさ…嫌になっちゃう、)

そう言って白蘭は笑った。
お仕事する時の、邪魔する相手を消しちゃう時の冷たい目で。


「そんなの嫌、」

「ブルーベル…?」

クッキーを食べる手を止めてぼそりと呟き、顔を上げると心配そうな相手と視線が合う。
可愛い、可愛い、お姫さま。
あなたは賢いからきっと全部分かってるのよね。

「ううん…ユニっ、明日は苺の紅茶がいい!」

「…はい」


指切りと言って出した小指に指を絡める相手を見つめる。


それでも嫌だと貴女が言わないから、今日もまた約束のお茶会は続くの。


ティースプーンが二つ


それがある限りお茶会は終わらないわね



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