白蘭の自室から上機嫌で出たブルーベルの視界の端に、ふと隣の桔梗の部屋が映った。
ドアが少しだけ空いていたので、そっと中を覗き見た。
シンプルに白で統一された部屋。開け放してある窓から入った風が、カーテンを揺らしていた。
部屋の真ん中にある、コーヒーカップと読みかけらしい開かれた本が置かれた真っ白なテーブルと椅子が目に入った。
「桔梗…いないのかしら」
つまらなさそうに呟いて、ブルーベルは中に入る。男の部屋だとかは全く考えてなかった。
テーブルの上にあるコーヒーに目が止まる。まだ湯気を発するそれに手を伸ばし、少しだけすすった。
「…っ、にっがーい!」
「……何をしてるんですか、ブルーベル」
いつの間にか戻って来ていた桔梗に呆れ顔をされてもブルーベルは気にせず、むしろ彼に咬みついた。
「ちょっと桔梗!このコーヒー苦いじゃない!」
「当然です。ブラックですから」
「なんでよっ、カフェオレにしなさいよ!」
「ブルーベル、それは逆ギレというものです」
はあ、とあからさまなため息を吐いた桔梗は、未だにぎゃあぎゃあ騒いでいるブルーベルを黙らせる為、両手で彼女の顔をはさんで上を向かせ、唇を塞いだ。
子供の彼女に容赦無く舌を入れて絡ませた。すると今まで固まっていたブルーベルがようやく抵抗する。
すぐに放すと、今度は平手が飛んで来た。甘んじてそれを受けると、何をするんだと言われた。
「コーヒーが苦かったんでしょう?口直しをしたんですよ」
「なっ……、あんなのが口直しになるわけ無いでしょ!桔梗の馬鹿!!」
真っ赤な顔で叫んで、ブルーベルは出て行った。
桔梗は、彼女の柔らかな唇に触れていた自身の唇を、そっと舌でなぞった。
珈琲を知るにはまだ早く、欲を識るには未だ幼い
end.
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