31.young


side 一護


奴の爪が抜けると、
俺は斬魄刀で自分を支えながら膝をつく。


「はっ…はっ…」

「短慮、短慮よ。一時の感情で仲間を払い、一時の感情で敵の懐に飛び込む。お前はこうしてわしに弄ばれ、一太刀の傷もわしに与えることなく、死んでいくのだ」

「ふ…っ、ざけんな!!!」


勢いよく振り払うがよけられる。


「倒すんだよ!腕が千切れようが、足が飛ぼうが…!俺はてめぇを絶対に!!」

「………だからお前は死ぬというのだ。お前は若い、若いがゆえにたやすく怒り、怒るがゆえに心乱す」


疑似餌を掴むとグチャグチャと音が鳴る。
今度は何をしよってんだ?


「そして心乱すがゆえに刃は鈍る。終わりだ小僧!お前はわしと戦うにはあまりに若すぎた!!」


手が離れて見えたのは。


「………!!!!」


おふくろの顔だった。


「ひひ、驚いておるな。わしは6年前のことなど憶えていない。確かにそう言ったはずなのに、なぜこうしてお前の母親の姿を作ることができたのか…、それが不思議でしょうがない、そういう顔をしてるなあ!!ひひひひひひっ!!!」

「…てめえ…!!」

「気が付かなかったか?わしがお前を攻撃する時、こっちの手だけを使っていたことに…」


そう言って左手を見せると爪が伸びてきた。


「除いたのだ、この爪で!お前の記憶を!!こちらの手で敵の記憶を除き、そいつが最も斬ることのできぬものをさがす。そしてこちらの手で、それと同じものを作りあげる!」

「………っ!」


つまり、俺が一番斬りたくない。
大好きなおふくろにしたってわけか。


「どんな冷徹な死神も、決して斬ることのできぬ相手が一人はいる。それは必ずだ。それを捜し出す事でわしはこれまで死神どもを退けてきた。そしてお前におってその相手とはこいつであるはずなのだ!!」


すると疑似餌の、おふくろの口が開く。


「…そうでしょう…?一護…!」

「……!!!」


それは紛れもなく、おふくろの声だった。




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