03

 レイチェルがUN-0の基地へ来た時、まず驚いたのが基地とは思えない程質素な外観だったことだ。年月の少し経った壁の塗装や埃の被ったような煉瓦の色が、何処かにありそうな小さな街の図書館を思わせた。他の能力者の能力でここの位置が特定されないように施されている事を、ガンダルはレイチェルに教えた。
「他にはどのような能力があるんですか?」
「んー例えば、雪を操ったり…傷を治癒したり、だな」
「色々な人がいるんですね…」
 レイチェルは感動していた。自分より凄い能力を持った人もいる、だがしかし自分も選ばれた。
「あんまり女性の能力者が居なくてな。女性の方が能力をコントロールするのが上手いのもあって、結構貴重なんだ。実を言うと、お前さんがエージェント初の女性能力者なんだ」
「なぜ、私がその記念すべき一人目なんですか?」
「他に能力を持った女性もいるが…高齢だったり、年齢が若すぎたりでエージェントには選べなかったんだ。お前さんは能力を持ってる上に、その能力を活かせるような頭脳もある。そして何より大学の研究室でも主体となって動いていた、そのリーダー性―必要だと判断されたんだ。お前さんの過去の経歴は調べてある。お姉さんが亡くなったのは残念だったな…」
 ガンダルは基地を案内しながら徐ろに煙草を取り出して、ライターで火をつけた。途端、
「ここは喫煙禁止ですよ、ガンダルさん。」
 片方の目を眼帯で覆い、黒い小さなピアスを嵌めている銀髪の男がガンダルが蒸し始めた煙草を取り上げ火を消した。
「いいじゃねぇかスティーク、こんくらい。」
「俺、煙草の煙が嫌いなんで、妥協できませんから。それに、ローゲンにも厳しくするように言われてるんで。」
 チッ、とガンダルが控え目に舌打ちをすると、銀髪のスティークという男はレイチェルを見た。男は一瞬目を見開いて驚いた様な表情を見せた。しかし、先程の無表情に戻り、ガンダルから煙草とライターを没収して踵を返していった。
「どこか、見覚えがあるような―」
 レイチェルは記憶を辿る。
―思い出した。彼は、姉の葬式に来ていた男性だ。当時は眼帯をつけておらず、現在の髪型よりも少し長めの髪だったこともあり、直ぐには思い出せなかった。
「あの人は…?」
「スティーク・ボーテン―お前の姉の、恋人だった男だ」
「恋人…。彼も、私と同じように能力が…」
「アイツもお前の姉さんが亡くなってからなんだ、能力が目覚めたのは。後は本人に聞きたいことを聞くといい」
 レイチェルは、スティークと再び会う事になったのを"偶然"だとはどうも思えなかった。


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