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「蝶子に脅迫文が届いた?!」
 肌に刺すようなカンカン照りのあくる日の昼、UN-0基地内の大広間にその言葉が響いた。

 UN-0基地は世界地図上には記載されない場所にあり、家族でさえ基地の場所を知らされていない。UN-0宛に送られる郵便物などは全て、国連が検査し、細心の注意を払った上でこの基地まで送られる。大抵は養成所や国連宛に手紙や荷物が送られ、国連を媒介してこの基地へと辿り着くのである。そうしてUN-0に届けられたものは、各自宛先の人物の部屋の付属のポストへと届けられる。
 それが今日、蝶子の部屋へと届けられた手紙が脅迫文であったことを、蝶子は飄々と口にしたのであった。
「蝶子に脅迫文を出すなんて、よっぽど私に殺って欲しいみたいね…」
「マキュール、顔が大変な事になってるぞ」
 物凄い形相のマキュールに一言いれたガブリエルも、蝶子宛の脅迫文をよくは思ってはいなかった。それは、話を聞いていたマキュールは勿論のこと、ロンショウ、ウィリアム、カルティーノも同じだった。
「不思議なのは、私の出身の超能力者養成所を経由せずに届いた事なんです。私宛の荷物は必ず養成所を経由しているんですが、今回はそうじゃなくて、直接届けられた可能性があるんです」
「直接?一体どうやって…」
 ガブリエルが驚くのも無理はなかった。この場所は、国連の中枢にいる数人しか知らされておらず、ここへと郵便物を送る人物は信頼された日本人、山市八緒という人物一人だけである。この場所を漏らした場合は死刑に値する罰が下されるほど、この機密のレベルは高い。この場所は複雑な素数のパスワードによって守れているが、それほど厳重に守られた機密を覆すかのように、この脅迫文は直接届けられた。受け付けをやっていた人物は、いつも通りにきた山市からこの手紙とその他の郵便物を受け取ったと言う。ここで疑われるのは―…。
「もしかして、山市がグル?」
 マキュールは眉を寄せながら言った。敢えて皆が触れなかったところをマキュールは平然と触れてみせる。だが、皆はそのことだけは信じたくなかった。今まで信頼していた人物が犯人とグルであるなど―。皆は何も言わず、ただ考え込んでいる。
「他の手掛かりは?」
 カルティーノは、重くなった雰囲気を元に戻そうと口を開いた。
「とりあえず、これを読んでみて下さい」
 蝶子は懐から脅迫文を取り出し、皆に差し出した。手紙の入っている封筒には勿論宛先しか書かれておらず、経由の印が押されていない。なぜ、山市はこれに不審がらなかったのか?やはり―。
「と、とりあえず読もうぜ」
 ウィリアムは声をかけ、皆もそれに頷いてゆっくりと紙を開ける。
『漣蝶子、貴方を倒して私が一番になる。貴方が消えれば私が一番になれる。そのうち向かうわfrom,No.1』
 この文面を見た途端、全員の表情は鋭くなった。目の光に強い憎悪が伺える。


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