03

 翌日、学校でシャーマオの死を知った。昨日テレビで流れていたニュースのことは、シャーマオのことだったのだ。同時に、よくロンショウを虐めていた少年が学校を辞めた。ロンショウは嫌でも真実を察してしまう。
(シャーマオが死んだのは、自分のせい?)
 彼は再び、深い絶望感を味わうことになった。

  **

「―ショウ、ロンショウ!」
 ロンショウの意識がウィリアムによって引き戻される。ロンショウは肩をびくつかせ、声の主を見やる。
「さっきからぼーっとして、どうしたんだよ?」
「あぁ…なぁ」
「なんだよ?」
「お前には、信頼できる奴はいるカ?」
 不思議そうな顔をしたウィリアムに、ロンショウは問いかける。
「は?どうしたんだよ、珍しい」
 その問に答えるより先に、ウィリアムには驚きながらそういった。
「…我は、幼い時から能力のせいで気味悪がられていた。だけど、友達になってくれた子がいた」
 ウィリアムは、こんな饒舌なロンショウを見たことがなかったため驚きながら、しかし真剣な表情で話を聞いている。
「でも…我をよく虐めてた奴が感情的になって、その子は殺されたネ」
「…」
 ウィリアムの眉はぴくりと一瞬だけ動く。しかし、その後も静かにロンショウの次の言葉を待っていた。
「我が殺したも同然――我には、もう何も無い。否、初めからないのもしれないネ」
 ロンショウは自嘲的に笑う。そうして、うっすらと辛辣な表情で息をつまらせる。
「何言ってんだよ、このボケが!!」
「!」
 ウィリアムは耐えきれず、ついに声を荒らげた。ロンショウはびっくりしたように目を見開いて、ウィリアムに視線を向ける。ウィリアムは呆れたような表情をしてロンショウを見つめていた。
「お前には、UN-0っていう帰る場所も、おれらエージェントっていう仲間――いや、家族が、ちゃんと存在してるだろうが。悲劇のヒーロー気取りか?俺はお前のことを仲間として尊敬し、信頼してる。お前は違うのか?」
 ―『立派な人間じゃないか』。
 ロンショウには何故か、自分を諭すウィリアムが、あの時友情というものを教えてくれた子に―シャーマオに重なって見えた―…。
(そうか、我には、ちゃんとある。信頼できる人達が)
 ロンショウの目に、涙が滲んでいた。
(シャーマオ、我はお前の分まで生きるよ)
 ロンショウが一つの決断をした時には、頬には既に涙が伝っていた。そんな様子をウィリアムが見て、ふっと笑みを漏らしながらロンショウの頭を小突く。
「アホ面」
「……アホには言われたくないね」
「んだとコラ」
 ロンショウにも小さく笑みが溢れた。あの日、シャーマオに見せた以上の笑みを。


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