02

 初めてロンショウが笑顔をみせた日の帰り、シャーマオは学校から数分程の最寄り駅で、列車を待っていた。
「おい」
 背中からした声に振り向くと、よくロンショウをからかっていた同級生の男の子が、下卑た笑みを浮かべながら立っていた。シャーマオは、あまり相手にしたくはないが渋々といったような顔でなんだ、と返答する。
「お前、最近やけにロンショウと仲良いじゃないか。なんであんな変な力持った異端児とつるんでるんだよ?」
 下卑た笑みは下卑た言葉を生み出す。が、シャーマオは冷静だった。
「友達だからね。彼を異端児とは呼ばないでくれるかな?少なくともロンショウ君は、君みたいに、自分には無いものを持ってる相手を妬み、馬鹿にする下品な奴じゃない」
 シャーマオは呆れ半分で嘆息しながら言った。シャーマオの言葉に、同級生は青筋を立て眉を寄せる。「気に入らない」と言う感情が、同級生を支配した。彼は衝動的に、シャーマオの背を押した。―悪魔に取り憑かれたように、導かれるがまま…。
 ――一秒も経たないうちに、列車の車輪に肉が巻き込まれ、引き裂かれる鋭い音が響く。飛び散った血や肉片、人体の脂でぎっとりとした車輪とを見た少年は現実へと引き戻される。駅に、悲鳴が上がった。

  **

 ロンショウの親は共働きで家を開けていることが多かったため、ロンショウは一人で食事を取ることが多かった。レンジで温めた味気ない料理が苦手で、彼は自分で作ることが多くなった。今日も彼は、自分の作った料理を卓上に並べ、テレビを見ながら黙々と食事を摂っていた。
『今日15時頃、〇〇駅で人が突き落とされる事件が発生、亡くなったのは駅周辺の学校の生徒と見られ、警察は、事件に関わったとされる少年に事情を―…』
 気の毒な話だ、と他人事のように聞き流していたロンショウが、真実を知るのはあと数時間後。


prev / しおりを挟む / next

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -