04

 ジョンは語り終えると、今度こそ大きなため息を漏らした。
「こんなものかな。小さい時に目覚めた能力は、コントロール聞かなくて、スコットを殺しかけたんだ。男は完全に死んでた。結局その後は警察が来て、スコットは男が襲ったことになって、俺は正統防衛ってことになったんだ。警察は不思議がってたよ、子供が成人の脳みそをカチ割ったことにさ」
「ジョンさん…」
「…スコットは大掛かりな手術して、助かったんだ。それ以来、親は何処で調べてきたんだか、能力者の養成施設に俺を入れて、会わずじまいなんだ」
 自虐的な笑みを浮かべて、ジョンはもう一度窓の外を見つめた。
「俺の人一倍の破壊力で、友情ってやつも壊した」
 今度は蝶子のほうをみずに、そう言った。
「会いたくはないんですか」
 蝶子は静かに尋ねた。ジョンは蝶子を見る。何か堪えたような表情で。
「会いたいって、どの面下げて会えばいいんだよ」
 泣きそうな声で、どうにもならない感情を抑え込みながら蝶子に言葉を投げた。今のジョンは、一つの鎖に縛られてもがいている。恐怖という感情に。
「許して貰えないのは怖い」
「私は、一生会わずに、謝ることもできずに悔やんだまま、死んでいく方が怖いです」
 蝶子はジョンの恐怖を悟っていた。鋭くジョンを見据えながら、淡々と話す。
「許して貰える貰えないよりも、会うことに意義があると思います。…ジョンさんは一生逃げるつもりですか?今の自分を変えようとしないまま、殻に閉じこもったまま。そうして毎年この日に、後悔するんですか?」
 なお鋭い視線を向けて、厳しい口調で言った。ジョンは驚いたが、目を逸らそうとはせず、見つめ返した。しばらく沈黙が流れたが、ジョンは何かを決心したかのように目をギュッと瞑ってから、微笑んだ。
「蝶子は優しいね」
 思いも寄らない言葉に、蝶子は驚いて「え、」と漏らす。ジョンは微笑んでいる。
「向かい合ってみるよ、逃げずに」
「…そうしてください、ジョンさん」

  **

 ジョンは、一つぼんやりとつけたオレンジの照明を見ながら、ベットに横になっていた。なかなか寝付けないジョンの中で、先程の蝶子の言葉が木霊していた。
『許してもらえるもらえないよりも、会うことに意義があると思います』
 ジョンは軽く微笑む。そうして、ゆっくりと瞼を閉じた。

  **

『優しいね、蝶子は』
 蝶子もまた、先程のジョンの言葉を思い出していた。背中を丸めてベットに座り、十を指している愛用の時計を握り締めていた。
「違いますよ、ジョンさん…私は、優しくなんかありません…」
 カチッと、時計を閉じる音が部屋に響いた。


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