02

「ジョンさん」
 ジョンの様子が気になった蝶子は、窓の外をぼんやりと眺めているジョンに声をかけた。ジョンは視線をこちらに向けると、意外そうな顔をして蝶子を見た。
「蝶子が俺に話しかけるなんて珍しいね」
 ジョンが驚いたのは、普段あまり話さない蝶子に話しかけられたことにあった。
「悲しそうに見えたので…」
 蝶子は、あまり言葉を交わさない相手のこともしっかりと観察していた。故に、ジョンの様子の違いがかなり気になっていた。
 ジョンは目を少しだけ見開いて、先程の表情に戻る。いや、先程よりも柔らかくなっている。
「蝶子は聡いなあ…ずるいよ、本当」
 ジョンは、ため息のようなふんわりとした息を吐くようにそう言った。
「今日はね、昔、仲の良かった親友の誕生日なんだ」
「誕生日?」
 蝶子は首を傾げた。そのようなめでたい日に落ち込んだ様子のジョンが、わからなかった。ジョンも蝶子がそう反応するのを最初から分かっていたようで、目を細めて微笑むと、「少し、昔話をしようか」と小さく息を吸い込んだ。



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