03

 静まり返る廊下に、鮮やかな赤の高級感の香り立つ絨毯が、ロンショウの片眼に照りついていた。カナダの国会議事堂に潜入したロンショウは、虐殺に関する情報を集めるべく、息を殺して廊下の曲がり角にいた。ロンショウは、遠くから聞こえてきた足音を感じて、ともに行動をしているレイチェルに目配せをした。二人は頷くと、角に近づいてきた人物の背後を奪い、首元にナイフを突き付けた。
「動くな…あまり手荒なことはしたくないネ…大人しく今からする質問に答えるヨ」
 ロンショウは、清潔感のある無精髭の男の手を抑えつけながら、ナイフを持つ片手に力をいれた。
「っ…」
 驚きと恐怖の入り混じる呼吸を聞かせる男に、レイチェルが近寄り、
「カナダ政府が…反政府軍の人々を虐殺したというのは、事実かしら?」
と、問いかけ、眼鏡の位置をなおす。
男はしばらく考えた様子を見せながら、重たそうに口を開いた。
「ああ、それは事実だ…前の与党は、カナダの経済成長のための政策を行ってきた。だがしかし…」
「しかし…?」
「現在の与党は、経済成長のために、銃を生産し輸出し始めたんだ。」
「それで、反政府組織が?」
「ああ。反政府組織というのは語弊があるが…反与党派が大規模なデモを起こして、治安が乱れたこともあって、軍が鎮静に向かったところ、与党の誰かの差し金で、虐殺が始まった。PKFがいたのにも関わらず…」
「…反与党派を排除したい誰かの陰謀ね。軍に指令を出せる人物と、密接な関係にあった誰か…」
 レイチェルは険しい顔つきで男の襟元を掴んだ。
「あんたはその事にどう感じた?」
「与党が人を排除しようとしたことは…政府全体の責任だと思ったが……私を殺すのか?」
 男は襟元の手からレイチェルの顔へと目を向けると、レンズ越しの威圧に蹴落されたように、語尾を小さくしてそういった。
「……気絶させて、ロンショウ」
ロンショウは、ナイフをしまって、男の首元を腕で叩いて気絶させた。
レイチェルは無線に、「こちらレイチェル」と呼びかけて、応答を待つ。
《こちらローゲン。どうぞ》
「政府…明確には与党が、反与党派を虐殺した事実が分かりました。供述した男は気絶させています。処遇のほうは…」
《本部に任せる。その男を本部に連れて行ってくれ》
「了解」
《お前達は戻ってくれ》
仮設本部では、ローゲンとガブリエル、蝶子とマキュールが待機していた。レイチェルからの無線を受けたローゲンは、いつもの会議のときのピリピリとした厳格な雰囲気を漂わせながら、
「俺とガブリエルは、与党内の人物を探り抹殺にあたる。蝶子とマキュール…お前達は、お前達のすべき事に務めろ」
と告げた。
蝶子とマキュールは顔を見合わせてから、二人揃って「はい!」と答えた。


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