剋にゆく人

−きっと死にゆくのでしょう。
薄く発せられた言葉ほど、虚しく響くものなどないのではないか。
段々と、肌が一つひとつ、生気を失ってゆく。
−悲しいものですね。
息が苦しいのか、顔を歪めながら私に告げた。
もう終わりは近いのに、それでも生きようと必死でもがく人間を、私はどうすることもできない。
単に諦めたからではない。死を司るのは私の役目ではないからだ。
何故これから死に行く女の傍に居るかと問われれば、あまり深い意味はないのだが。
ただ、一人で死に行くのは流石に成仏しきれんだろうと言う憐れみであろう。
−死ほど、怖いものはありませんね。
語尾は消えかかり、目は虚ろになっている。
ああ、もうすぐ逝くのであろう。
短い間を少しおいてから、息の音は途絶えた。あまりにも儚い羽音に、心臓が痛む。

私も此処を時期に出る。女の来世を願いながら。

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -