02

 僕の身体は重く動けなかった。冷や汗を流して奥歯を噛み締める。はあ、と息があがるのを感じながら、武装した男を見つめる。男は黒いバンダナを口にして、頭を黒いニット帽で覆っている。バンダナと帽子の僅かな隙間から覗くのは、ギラついた琥珀色の瞳だった。
「坊主、怖いのか?大人しくしてたら殺しはしない。おい、逃げようとは考えるな。俺の質問に答えろ。」
「はっ、い・・・。」
 僕の声は僅かに掠れて裏返る。下手な事をすれば自分の命がないことは分かりきっていた。僕は、ゆっくりと息を整えようとしたが、銃口は未だこちらを向いていることに恐怖を感じ、心臓は落ち着いてはくれなかった。
「・・・おい、この家の金庫はどこにある?」
「ご、めんなさい・・・僕、離に住まわされてたから、詳しくしらなくて・・・。」
「ふぅん・・・ま、いいや。」
 男は銃口を静かに落すと、僕の腕を解けないようにきつく紐で縛った。
「人質になってもらうぞ。」
(この人は分かってない、僕がこの家に必要な人間ではないことを―・・・。)
「僕を人質にしても・・・誰も心配するわけ、ありません。僕の弟なら、別ですけど・・・。」
「へぇ、そんなに両親から嫌われてんの?」
 ―嫌われている・・・一番考えたくなかった事だった。
「こんな家から出ちまえば?俺が、お前を必要としてやる。」
 男は帽子とバンダナを外した。目鼻立ちの整った男で、にたりと笑みを浮かべ、僕の襟首を掴んだ。
「あ、ぼ、ぼく・・・。」
 心臓へ負担をかけ過ぎたせいか、意識は朦朧とし始め、男の胸元に飛び込むように意識を飛ばした。

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