01

 僕は、裕福な家庭に生まれた。先天性の病気を持って生まれた僕は、虚弱な身体で、あまりの貧相さに両親は見放した。両親は、領地内にあるが、本邸から少しばかり離れたところに僕を隠すように住まわせた。必要最低限の物は準備され、担当の医者を住まわせ、本当にひっそりと生きていた。

 そんな僕も十五歳になった。身体が弱いのは健在で、学校には勿論行けなかった。週に何回か家庭教師を雇って家を出ることなく勉強している。本邸では二つ下の弟がきっと立派に育っていることだろう。可愛がられて、きっと幸せに暮らしているのだろう。そう考える度に悔しくなった。

 ある日、弟の誕生会が催されることになった。少なくとも数百人は訪れる大きなパーティだ。
(僕は、一度だって祝ってもらったことはないのに―。)
両親が喜んでくれたのは、僕が生まれた時ぐらいなんだろう。僕が物心ついてからは、両親の僕への笑顔はなかった。疎ましいそうに素っ気のない態度だったことしか記憶にない。
(きっと、弟の誕生会にだって僕は参加できない。)
一人考えている時に、ドアをノックする音が鳴る。
「渉坊ちゃん、今度の雅人坊ちゃんの誕生日会は、参加できるそうですよ。体調がよろしいようでしたら参加しなさいと旦那様がおっしゃっておられました。」
 そう伝えに来たのは、僕が生まれてから今までずっと側で支えてくれた執事だ。彼は笹竹文雄といって、『笹じい』と呼んでいる。
「久しぶりに雅人に会えるね・・・何時ぶりだろう―」
「新しく素敵な服を見立てましょう。坊ちゃんならどんなものでも似合いますよ。」
「へへへ、楽しみだなぁ。」
 この離から出るのは、実に十五年ぶりのことだ。

 パーティの当日、僕は離から本邸へとお付きの者と一緒に向かっていた。庭を見るのも新鮮で、つい馬車から身を乗り出して外の景色を見ていた。本邸につくと、両親はやはり無表情に僕を一瞥した。直ぐに笹じいを見て労いの言葉をかけると、来なさい、と冷たく言って歩き始めた。両親は足取りの重い僕に痺れを切らして、僕の手を引摺るようにして歩いた。両親は、ある一室の前で立ち止まり大きな扉を開けた。そこには僕が今まで住んでいた離よりも豪華絢爛で、目がチカチカするほどに眩い部屋だった。両親は、ここに居なさい、暫くしたら誰かを呼びに来させるから、と手短に言って踵を返した。僕は、この大きな部屋で一人になった。
 何時まで経っても呼びに来る様子がないことに、僕は少しばかり落ち込んでいた。
(やっぱり来ない方がよかったのかな・・・)
ガチャリ、ノックもなしに開かれた扉に心臓が飛び出るほど驚いて、視線を向けた。
「動くなよ、坊主。」
―そこには、武装した男が一人、僕に銃口を向けて立っていた。

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