寝起きの良い方のはずの僕が、久々に目覚ましの音で起こされる。
そういえば、体が少し重い。
よく考えてみれば昨日もだったし一昨日もそうだったかもしれない。

思い当たる節は一つあった。
でも、あの人はちゃんとしてくれたはずだった。

枕元に置いてある手記の赤いマークが付いた日からもう2週間ばかりが過ぎている。
ほんの少しだけ気になった僕は自分が通っている学校に併設されている病院へ向かった。


『運命論』


「そう、ですか。」
「...よく考えて、学業も大事だけど、ね。」
「...また来ます。」

結果は僕の予想通りだった。
けれど腑に落ちない、あの人はちゃんとしてくれていたはず。
あの人の、アルヴィンの事はちゃんと好きだと思う。
けれど学生中に、なんて事を知ったら厳格な父親はきっと許してはくれないだろう。
だから、こんな事にならないように辞めて欲しいと言ったはずだったのに...。

学校には行く気にはならず、そのまま寄宿した。
部屋には封筒が置いてあり、宛名にはレイアの名前が書いてあった。
内容は能天気なもので、重い気持ちが僅かに軽くなりレイアに会いに帰郷する事にした。

「あれ、ジュード?今休みなの?」
「違うよ、なんかレイアの手紙見たらレイアに会いたくなって。」
「珍しいね、もしかしてホームシックとか!」
「からかわないでよ」
「ごめんごめん、じゃあ私の部屋に来る?」
「うん」

レイアの家へ行き、そっと部屋の中へ入る。

「ジュードが私に会いに来るなんて、なんかあったんじゃないの?」
「..うん、やっぱり分かるかな」
「何年一緒だと思ってるの?」
「そうだったね」

そして本題を口にした。
するとレイアはとにかく驚いていた、ソニアさんの耳に入ったら厄介だと思い静かにさせる。

「あ、相手はわかってるの?」
「うん」
「...アルヴィンくん?」
「...うん、ちゃんと、避妊してくれていたはずなんだけど..ね。」
「そっか、で、どうするの?」
「うん、...僕はね、産もうと思ってる。」
「ジュードらしいね」
「でも」
「でも?」

わずかに沈黙が走る。
でも―
この先を言うべきか少し迷うが、これを言わなければここまで来た意味はないかもしれない。

「アルヴィンが、怖いんだ。」
「アルヴィンくん、ジュードに酷い事するの?!」
「違うよ、レイア。ただ、独占欲が最近増したというか、僕に依存しているというか」
「そうなんだ」
「それに...確実にできる訳じゃないけど、本当に避妊してくれたのか、とか」
「アルヴィンくん疑ってるんだ」
「ち、違うよ」
「同じ事だよ、で、ジュードはどうしたいの?産みたい?アルヴィンくん好き?」
「...産みたい、けどアルヴィンは...好き、だと思う」
「曖昧だなあ、じゃあこれからずっとアルヴィンくん居なかったらどう思う?」

どう思うなんて、今はよくわからない。
けれど、僕もアルヴィンの事は好きだったと思う。
ただ、最近依存されるのが怖く感じるだけ、それとーあれの事。
僕にそんな恐怖を与えるアルヴィンが居なくなったらー

「ジュード?」
「...」
「もう、泣かないでよ」
「え?あ、本当だ。」
「もうジュードの中で答えがでてるんでしょ」
「そう、だね」

そのまま僕はイルファンに戻る事にした。
きっとあの人にも会えるだろうから。

「ジュード、どこ行ってたんだ」
「ちょっと、ル・ロンドに戻ってたんだ」
「心配するから、一言言っていってくれよ」
「心配?」
「あぁ」
「お腹の赤ちゃんの事?」
「あぁ....!!」
「アルヴィン?やっぱり、そうだったの?」
「...」

イルファンに戻り寮に帰ろうと足を進めれば、寮の前でアルヴィンが手持ち無沙汰にうろうろ。
完全に変質者になりかねない彼に見つかり問いつめられる。
そして偶然に思いついた罠を張り、アルヴィンは嵌ってくれた。

「...」
「...」
「...僕、ね。アルヴィンの事、好きだよ。だから、...怖いって感じる事あるけど、やっぱり好きだよ。この先、ずっとアルヴィンが居ないって考えると凄く、淋しくて、そっちの方が怖いって..僕思ったんだ。」
「..ジュード」
「だから、正直に言ってくれたら僕もちゃんと言うから...だから言って」
「...」
「...」
「...今、ジュードの話聞いて、悪い事をしたと思った。ジュードが他の奴の所行ってしまったらって思ったら怖くて、怖くて、怖くて、俺の物にしないとと思って、...逃げれないように、ゴムに穴をあけたんだ...。」
「...そっか、そうなんだ、ね。」
「...」
「...僕、許すよ。アルヴィンの事。」
「ジュード..。」
「アルヴィンがね、淋しくないように、怖い思いしないようにずっと好きで居るから。だからね、一緒に居て育てて欲しいんだ。」

僕がそういうと、アルヴィンは僕をそっと抱きしめてくれた。
きっと、好きとか、愛してるとか、ごめんとか、ありがとうとか、そういう意味だと思う。


「でも、よくそんな確率の話なのに僕の罠に嵌ったんだね。アルヴィンらしくない。」
「ジュード君が好きだから、な。」

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