どうしたら僕は先生を諦められるのだろうか。
あの話の中で僕は幾度となく先生に裏切られ、最後は銃殺されてしまうのに。
それでも僕はまだ続きを書きたいと思うのは何処かで僕の思いが報われる事を望んでいるのだろうか。
でも現実はハッピーエンドには終わらない、先生と僕は一緒にはいられない。

「おい、マティス、起きているか」
「せ...んせ?」
「俺の上着を抱えて寝ちゃって、どれだけ俺の事好きなんだよ」
「ごめんなさい...それより、父さんと母さんは...」
「頑固そうな親父さんだな、とりあえず学寮に居るって事にしてある」
「それで...納得する訳ないですよ」
「お袋さんに感謝するんだな、『少しの間ぐらい、私たちと離れて考える時間をあげましょう』だってさ」
「そう..ですか....でも」
「『でも、学校へは行きたくない』だろ」
「...」

こんな苦しい気持ちを抱えたまま学校へ行けば僕は呼吸すらまともにとれないだろう
きっと僕の目の前で、知らない所で先生は他の女の人と...

「おい、マティス」
「すみません...先生は、気持ち悪くないですか?僕の...事」
「確かに変わった奴だな。初めてだなそんな奴は。」
「...」
「だからそんな顔するな。初めて受け持つ生徒だから大切な一人だ」
「大切...、あの子は、別の"大切"ですか」
「おいおい、あれは不可抗力だ。あいつが」
「夜、一緒に帰る所見たんですけど、それでも僕と一緒の"大切"ですか」
「一緒だ」
「...一緒なら、僕もしたいです。」

結局僕は彼を諦める事なんてできないのだろう。
ハッピーエンドに終わるはずもないのに、僕は彼の側に居たくて仕方がないのだ。
だからせめて、他の人と同じようにされたい。でも―

「やめとけよ、後で後悔するぞ」
「...ごめんなさい。僕は男なのに...。」
「男とか、そうじゃなくて。大人になって俺の事が足枷になっても困るからな」
「...しないと思います、僕、生まれて初めて恋をしたんですから」
「なら余計に、だ」

先生は僕の間違えて進んだ道を正そうとしてくれる。
それを僕は望んでいたはずなのに、その為に空白の半月を過ごしていたはずなのに。

「先生....僕、辛いです。」
「おい、泣いてるのか」
「間違ってたとしても....僕、先生の事が好きなんです...諦められないんです...」
「マティス...」

ポロポロと泣く僕の顔を先生の大きな掌が覆い、涙をすくい取られた。
先生は優し気な目で僕を見た後、頭をそっと撫でてくれた。

「ほら、涙止めろ」
「...ごめんなさい」
「マティスはどうしたいんだ。」
「...先生を好きなままで居たい、だけどそれで傷つきたくないから諦めたい..です」
「わがままだな、それにさっき言った事と矛盾してる」

そう、僕のわがままだ。
諦められないと泣きながら、結局僕はまた自分が傷つき苦しくなるのを恐れている。

「...先生と、出会わなければ良かった」


『paranoia 04』


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