被害者ジュード・マティスは至って普通の学生。
上京し、一人暮らしで勉学に励む真面目な学生、部活動には所属なし。
朝は青白い顔で登校し、夕方になれば校門を潜った途端青い顔。
ああ、怯えてる。俺の行動一つで彼はこんなにも怯えてるのだ。

彼に気づかれないように後を付ける。
たとえバレたとしても身分上なんとでも言い訳がつける。
そして彼が家につく少し前に先回りして向かいの事務所に入り彼を待つ。

「ジュードくん、どんな顔するんだろうな」

彼は郵便受けを開け、朝は見てみぬふりをした写真を見て郵便受けの前で踞る。
そしてすぐに立ち上がりその写真達を鞄の中に詰め込み部屋へ駆け込む。
彼はまもなくまた顔が青白くなるだろう。

きっと彼は驚いているのだろう。
だって部屋の窓が全部空いているのだから。
彼が学校へ行った後、彼の部屋の窓ガラスの施錠部分を割り鍵を開けて中に入った。
そして彼のベッドに顔を埋めて欲求が満たされた後知り合いに鍵を複製して貰い遅い出勤をした。

「〜♪」

俺がジュード君の姿を想像している最中に一本の電話が鳴った。
俺はその番号に心をときめかした。

「はい、どなたでしょうか。」
「..あ、の..アル..ヴィンさん...」
「えーと、君は」
「あの、この前の...」
「ああジュード君、だな。どうかしたのか。」
「じ、実は...」

不安に満ちた声。
浅い呼吸音。
欲求は加速するばかり。

「...すみません、なんでもないです!ごめんなさい...!」
「ジュードくん?」
「本当、なんでもないんです...。ごめんなさい」

彼はそういって電話を切った。
彼は自分の身の上に起きている事を話さなかった。
話さなかったのはきっと自分が同性に性の対象として見られてる事に対して"汚い"と思い込んでいるのだろう。
俺はそんな彼に興奮し、抱きしめたいと思ったけれど。
まだ足りない、もう少し手順を踏む必要があるのだ。

俺は携帯を再び手に取り見慣れたダイヤルに電話した。

「よー、俺だけど。」
「なんだよ、さっき合ったばかりだろう。」
「鍵はありがとな。それでもう一つお願いがあるんだけど」
「また犯罪の片棒を持てっていうのか?」
「報酬は弾むし、ほらお前の知られたくない情報だってたーくさん持ってる」
「...わかった。なんだよ。」
「ちょっとしたお仕事だよ。だから目出し帽と革手袋用意しておいてくれ。」

彼はしぶしぶと不満そうに電話を切った。
彼と俺との関係は俺の方が上位にある、強請ればなんでもしてくれるだろう。

「ジュード君、今、何考えてんだろうな」


『Fake tolerance 3』

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